2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24657162
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三浦 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10173973)
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Keywords | 性決定機構 / XY型 / ZW型 / カエル |
Research Abstract |
遺伝的な性決定の仕組みには、XX/XY型とZZ/ZW型の2つのタイプが存在する。我が国に生息するツチガエルはその2つの性決定機構を有しており、タイプは地域集団よって異なる。とくに関ヶ原付近では両タイプの集団が近接し、まさに雌雄を決する戦いが展開されている。近年、その周辺において、既に両タイプが接触した結果、性決定の仕組みがZW型にに収束した集団を発見した。本研究では、この集団を遺伝学的、実験発生学的に解析し、接触によって展開された性決定機構変換の実態を解明する。そして、XY型とZW型相互変換の進化仮説を提唱することを目的とする。 平成25年度は以下の結果を得た。 1. ZW型とXY型の人為交雑による接触の再現。昨年度行った2通りの交配、XX♀x ZZ♂とZW♀x XY♂について、その子孫の性染色体構成と性を調べた。XZはその多くが♀であった。他方の交配で得た子孫では、ZYが♂、WXが♀、ZXは同様に多くが♀となり、WYは♂ないしは♀となったが、その比率はシリーズによって異なっていた。 2. WWおよびYYの作成による遺伝子退化の確認。ZW♀x WY♂の交配を6シリーズ行ったところ、全てにおいてYYが受精後10日目で死亡した。一方、WY♀x XY♂の交配を行ったところ、YYは死亡せず変態まで発生した。しかし、成熟後YY個体の比率を調べたところ、期待値より有意に低かった。 以上の結果から、WYは雌雄に分化すること、そしてW染色体には致死遺伝子が存在する一方、Y染色体には明確な致死遺伝子が存在しないこと、しかし、YYの生活力は弱いことがわかった。ZW集団とXY集団が交雑した場合、XZの多くが♀となり、W染色体が集団から消失し、Y染色体の比率も低下することが実験によって証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に従い主に2つの実験を行い、ほぼ予想された次の結果を得た。 1)XY型とZW型集団の正逆交配によって得た個体について、性染色体の遺伝子型と性を調べた。その結果、XZは多くが♀に分化すること、一方、ZYは♂、WXは♀、WYは雌雄両方に分化し、その比率は交配シリーズによって異なった。 2)WWとYY個体を作成し、性染色体上の遺伝子退化を調べた。その結果、WW個体は受精後10日ですべて死亡したことから既に遺伝子退化が進んでいることがわかった。一方、YY個体は成熟したことから致死遺伝子が存在しないことがわかったが、成熟後の比率が低かったことから生活力は低いと予想される。以上の結果により、2つのタイプ間で交雑が生じた場合、W染色体が消失し、Y染色体の比率も低下する要因が証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い実験を遂行する。平成26年度は、XZ♀x ZZ♂の交配を行い、その遺伝子型と性を調べることで、W染色体を必要としない新たな♀へテロ型の性決定機構が成立するかどうかを確認する。一方、XX♀x XZ♂を交配し、同様の調査をすることで、Y染色体が存在しない♂へテロ型の性決定機構の成立についても検討する。さらに、XY型とZW型が混成している地域を調査し、実際にどのような遺伝子型をもつ雌雄の交配が行われているのか、つがいの個体、あるいは卵塊を採集し、遺伝子型を調べて推測する。以上の結果をもとに、XY型とZW型の交雑によって新しいZW型性決定機構が成立する仮説を提唱する。
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