2013 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスはいかにして宿主の行動を制御するのか:バキュロウイルスを用いたアプローチ
Project/Area Number |
24658047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20378863)
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Keywords | バキュロウイルス / 行動異常 / RNA-seq / カイコ |
Research Abstract |
昆虫病理学の分野では、「Wipfelkrankheit (梢頭病)」と呼ばれる病気が100年以上前から知られている。これは、昆虫ウイルスの一種であるバキュロウイルスに罹患したチョウ目昆虫の幼虫が木の枝の先でぶら下がって致死する病気である。バキュロウイルスは、その感染末期に宿主の行動を活発にし、寄主植物の上方に移動させ、その場で致死させる。その結果、鳥などへの補食や風雨による死体からのウイルスの飛散が促進され、次代が広範囲に伝播する。つまり、ウイルスの利己的な行動制御であると考えられている。私たちのグループは、カイコとそのバキュロウイルスを用いて、ウイルスの脱リン酸化酵素が行動制御に関わることを明らかにしている。また、このタンパク質が、酵素としてではなくウイルスの病原性を高めるために必要なウイルス粒子の構造タンパク質であり、宿主脳への感染に必須であるという驚くべき結果を得ている。本申請は、分子ウイルス学とトランスクリプトーム、および電気生理実験技術を組み合わせて、ウイルス・宿主両面からウイルスの行動制御に迫ることを目的としている。今年度は、変異ウイルスライブラリーのスクリーニングにより同定した新規行動関連遺伝子に関して、詳細な機能解析を行った。また、ウイルス感染脳のRNA-seqを行い、異常行動と関連がある可能性がある宿主遺伝子候補のピックアップに成功した。電気生理実験に関しては、現時点では安定した実験結果を得ることはできていない。
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Research Products
(3 results)