2012 Fiscal Year Research-status Report
マツノマダラカミキリの分布の北限決定要因:夏の夜の寒さが性成熟を妨げるのか?
Project/Area Number |
24658143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
前原 紀敏 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (20343808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 克典 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (40343785)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 昆虫 / 分布 |
Research Abstract |
昆虫の分布の北限は、越冬可能温度(耐寒性)や生活環完了に必要な有効積算温量(実際の温度と昆虫の発育限界温度との差の時間積算)によって決まっているとされることが多い。しかし、研究代表者および分担者は、生活環を開始するために必要不可欠な成虫の産卵の成否に着目した。本研究の目的は、「マツノマダラカミキリの分布の北限は、夏の夜の寒さが成虫の卵巣発育および寿命に影響することによって決まっている」という仮説を検証し、成虫になった後、性成熟のために摂食する必要がある昆虫の分布の北限を決定する要因を明らかにすることである。 1.マツ林の夏季の林内温度の測定:マツノマダラカミキリが分布する秋田市、分布境界の盛岡市と青森県深浦町、および分布しない青森市において、マツ林の林内温度変化を測定したところ、最低気温、最高気温ともに青森市が低かった。 2.マツノマダラカミキリの人工飼育:次年度以降の実験材料を得るために、マツノマダラカミキリ(岩手県産と茨城県産)の幼虫を人工飼料で飼育した。 3.マツノマダラカミキリ(岩手県産)の卵巣発育および寿命に対する温度の影響:15℃恒温区では、寿命への影響は小さかったが、摂食量が少なくなり、卵巣が発育しなかった。しかし、25℃(14時間)-15℃(10時間)変温区では、25℃恒温区と同様に、長期間生存し、また摂食量が多く、卵巣もよく発育した。そのため、15℃程度の夜の寒さでは、岩手県産のマツノマダラカミキリの卵巣発育には影響しないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた4箇所(マツノマダラカミキリが分布する秋田市、分布境界の盛岡市と青森県深浦町、および分布しない青森市)において、マツ林の林内温度変化を測定でき、さらに当初の予定では25年度に行うことになっていた変温区(25℃-15℃区)についても24年度に調べることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
15℃程度の夜の寒さでは、岩手県産のマツノマダラカミキリの卵巣発育には影響しなかったが、マツノマダラカミキリが分布しない青森市の夏季の林内最低温度は15℃どころか10℃よりも低いため、15℃より低い温度では卵巣発育に影響が出る可能性もある。また、茨城県産のマツノマダラカミキリは、岩手県産のマツノマダラカミキリよりも低温に弱いかもしれない。以上の点について、今後調べていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(1 results)