2012 Fiscal Year Research-status Report
ラドントレーサーによる若狭嶺南流域圏における地下水湧出が生物生産に及ぼす影響評価
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24658175
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
田原 大輔 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (20295538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (00533316)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 海底湧水 / ラドントレーサー / 沿岸生態系 / 一次生産 / 生物多様性 |
Research Abstract |
小浜水産高校の実習船あおばを使用し、湾奥部(北川河口域)から湾口にかけての縦断ライン上に調査点を設け、地下水トレーサーであるラドン濃度の測定および栄養塩や植物プランクトンの現存量を毎月調べた。底層水中のラドン濃度の時間的・空間的変化より、北川の河口から2-4 km沖合に地下水が多く流出する場所が存在し、その流出量は春季に最も多いことが示唆された。また、生態系の根底を担う植物プランクトンの現存量も、海底湧水の影響が強い春季に多くなる傾向が認められた。 2012年7月末から8月初旬にかけて小浜湾内のアマモ場2カ所(湾奥の甲ヶ埼、湾口付近の泊)において、湧水環境と生物生産環境の調査を実施した。甲ヶ埼と泊のアマモ場における1 m2当たりの海底からの湧水量は、26.7 cm/dayと8.2 cm /dayであった。そのうち淡水成分が占める割合はそれぞれ0.7%と0.3%であった。またラドン分布より、甲ヶ埼は海底に高ラドン域があり、海底からの地下水湧出が顕著であるのに対しあるが、泊は海岸付近に高ラドン域があり、地下水湧出は海岸に集中していた。水中の植物プランクトンおよびアマモに付着している付着藻類の濃度は、泊よりも甲ヶ埼の方が高かった。また、アマモ場内の付着動物量も甲ヶ埼の方が著しく高かった。このことは、海底からの地下水湧出が甲ヶ埼のアマモ場内の生物生産を高めていることを示唆している。また、甲ヶ埼の藻場から得られた魚類のほとんどが、藻場の動物を捕食しており、湧水・藻場を起点とした生物生産システムが存在している可能性が示された。 北川・南川流域のラドン濃度を季節ごとに網羅的に調査した結果、北川流域の2支流においてラドン濃度が常に高く、地下水が湧出している湧水河川であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブテーマ1では、若狭地方の北川・南川および小浜湾をモデルフィールドとし、水中のラドン濃度を網羅的に測定することで、河川および海域における湧水インパクトの評価手法として、ラドンが有効なトレーサーであることを示した。北川・南川流域における湧水マップはすでに完成しているので、今後は小浜湾を網羅的に調査し、詳細な海底湧水マップを作成する。 サブテーマ2の海底湧水と沿岸域の一次生産に対するインパクト評価もほぼ完了した。ラドン濃度を湧水インパクトの指標とすることで、クロロフィルa濃度と植物プランクトン現存量の関係を明らかにした。また浅海域のアマモ場においては、湧水指標としてラドン濃度と湧水量を計測し、クロロフィルa濃度、付着動物量、魚類の胃内用物との関係を調べることで、湧水インパクトの差異が、アマモ場内の生物生産にも影響を及ぼしていることを示唆する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
小浜湾全域を網羅できる調査点に変更し、ラドン収支から湾全体スケールでの地下水の湧出量および栄養塩の供給量を評価する。また,地下水流出と植物プランクトンの応答の関係を明確にするため、地下水インパクトが異なる定点でのモニタリングを継続し、湧水環境の違いが一次生産力の違いに影響しているのかを明らかにする。 合同調査を継続し、泊・甲ヶ埼における地下水湧水量の季節による違い、また湾内の他の藻場における湧水量の評価を行う。さらに、本年度の調査から示唆された湧水とアマモ場生態系の関係性をより明確にする。 北川本流と、非湧水支流および湧水支流において水温および流量を毎月調査し、湧水河川の特徴を明らかにすると同時に、出現する魚類構成を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の多くは、栄養塩の測定に係る試薬やサンプル瓶などの消耗費として使用する。また、一次生産力の指標として、13Cトレーサーを用いた疑似現場法を行うための外注費を計上している。また、調査・分析に関わる消耗品費も計上している。
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