2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659153
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
辻本 雅文 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00281668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 明 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50300893)
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 助教 (90455345)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 小胞体アミノペプチダーゼ |
Research Abstract |
これまでに我々は、インターフェロンやLPSなどの感染の兆候になりうる刺激により小胞体アミノペプチダーゼ1(ERAP1)がマクロファージから分泌され、その貪食能を亢進するなどその活性化に寄与することを見出していた。今年度は分泌されたERAP1の血管内皮細胞への作用を想定した解析をすることで、分泌ERAP1を介したマクロファージおよび血管内皮細胞による血圧調節の可能性について検討した。 血管内皮細胞は高いNO産生能を有し、NOは血圧調節作用を有することから、マクロファージの活性化を介したERAP1の血管内皮細胞への作用の有無は注目に値する。そこで組み換え型ERAP1を基質であるアンジオテンシンIII存在下でRAW264.7細胞を処理したところ、基質のN-末端アルギニンの遊離に伴って、NOの産生が増強されることを見出した。この作用は1)アミノペプチダーゼ阻害剤である、ベスタチンやアマスタチンで効果的に阻害されること、2)酵素活性のない変異体を用いた実験ではNOの産生増強は認められないことなどから、何等かの炎症性刺激を受けた細胞(今回はマクロファージでの検討のみであるが、血管内皮細胞を含めて)から分泌されたERAP1が、そのN-末端にアルギニンを有する特定の基質への作用を介して、アルギニンの遊離を促進し、その結果として、血圧低下作用を有するNOの産生を増強していることが考えられた。 一方ERAP1の分泌機構に関しても解析も進展しており、自然免疫系の受容体である特定のToll-like受容体を介したカルシウムの細胞質内への流入が引き金になることが判明している。 以上本研究により、ERAP1が自然免疫系の発動により分泌され、血圧調節に関与することで、生体防御の重要な部分を担うことが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ERAPは自己免疫疾患、血管新生、炎症反応の修飾等多様な機能を有することが、明らかになり注目を集めている。さらに遺伝子多型の解析により本酵素が血圧調節に関与する可能性が示唆されていたが、今回の研究によりその分子メカニズムが明らかになってきたと考えられる。ERAP1の刺激依存的な分泌という現象は我々が独自にみいだしたユニークな研究成果であり、それを介した本酵素による血圧調節機構の存在、さらには生体防御への関与の解明は、タンパク質の局在性の変化による全く新しい多機能性の発現メカニズムの存在が明らかなるものと期待できる。 以上のことから提案内容すべてにわったて検討できているわけではないが、本酵素の関わる全く新しい血圧調節機構の存在、そのメカニズムが明らかになりつつあり、萌芽研究として一定の成果が得られていると判断している。さらに本酵素の血圧調節作用は動脈硬化の逓減効果に結びつく可能性を高めており、今後検討する価値があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でERAP1の新たな生理的/病理的機能があきらかになりつつあることから、今後はそのNO産生の増強を軸とした研究を送球に展開していきたい。すなわち1)ERAP1のノックアウトマウスから調整したマクロファージ、血管内皮細胞でのNO産生能を野生型と比較検討する。2)ノックアウトマウスをインターフェロンやLPSで刺激した際の血圧の動向を野生型マウスと比較する。さらには組み換え型酵素を注入することによる効果を比較検討する。さらには3)動脈硬化モデルマウスから調整したマクロファージ、血管内皮細胞でのNO産生能を野生型と比較検討するなど、個体レベルの検討を加えることで、分泌されたERAP1を介した血圧調節の意義および動脈硬化症への関与を明らかにしていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ERAP1のノックアウトマウス、動脈硬化モデルマウスの購入が必要になると予想される。残りの資金は消耗品の購入に充てることになると考えている。
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Research Products
(4 results)