2012 Fiscal Year Research-status Report
我が国の医療機関における業務継続計画(BCP)策定率の改善・向上を図る取り組み
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24659248
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
大原 達美 東京医科大学, 医学部, 助教 (60246220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 一 東京医科大学, 医学部, 教授 (80256263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 医療機関のBCP / BCP策定支援ツール / 診療業務継続 / インフラベースアプローチ / 災害時医療 / BCP策定率 / BIA / RTO |
Research Abstract |
平成24年度の研究計画に沿って成果をみると、①BCP策定の事前概要調査(BCP策定支援ツール提供(前)における医療機関のBCP策定状況調査)については、全国8,605病院中の約9割を占める400床未満の病院(第3回病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会.厚生労働省2012)より721施設に対して郵送調査法によるアンケート調査を実施した結果、85施設より回答(回収率11.8%)を受けた。 この結果、策定済みは14.1%と判り、平成21年の内閣府調査時のBCP策定済みと回答した4.8%に比較して9.3%改善している状況であった。これは、中小企業16,000社のBCP策定率4.8%(信用金庫 中小企業活況レポートNo.147 2012)よりも高い策定率であり、本研究にて無償公開するBCP策定支援ツールは、医療機関のBCP策定率の更なる向上に貢献できると考える。 次に、②BCP策定実地詳細調査として関東地域近郊の、「インフラ別BCP策定支援ツールの協力病院となる医療機関約100施設に対して訪問調査」については、申請時の想定予算が獲得できなかったことから、研究全体に渡り予算配分の見直しを行ったところ3施設にて実施することとした。しかし訪問調査の目的とした評価基準の設定は、研究計画の通り病院種別や診療提供機能別に分けた上で、インフラ別にBCP対応状況を定めることができた。この内容は、第32回日本医療情報学連合大会(2012)にて成果発表した。 この評価基準と定めた内容は、BCP策定においてI災害対策、IIインフラ状況、III施設概要の3つの領域を大項目とし、一つ下の階層として11分類の中項目を定め、更に具体的なBCP策定に必要な内容を詳細項目とする、3段階に階層化と分類化を進めて網羅性を高めたことで精度向上につながり、BCP策定支援ツールとしての基本設計は整ったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的にて斬新性とチャレンジ性としして挙げた5点より、達成度について自己点検を報告する。 1.医療機関が導入し易いBCP策定方法の採用.では、専門家を要しない様に、ICTを用いてBCP策定支援ツールの開発を進めると共に、「発災時における自院の診療活動の継続という身近な視点として的確に提供する」ことを最優先に取り組んでいることから、達成し得ると判断する。 2.外来機能・入院機能・救急機能への影響に対する速やかな判断.は、インフラの利用可否と病院機能との関係を簡易版のBIA・BCP策定プランや本ツールを利用した他の医療機関との比較をチャートで視覚的に捉えて、現状を素早く認識できる工夫を図っている。従って、発災時の診療機能の低下と事前のBCP対策の効果について、判り易く影響範囲と状況を示せる様に開発に取り組んでいることから、達成度は高いと判断する。 3.現在の各医療機関の持つ職場環境と資産の活用.では、BCP策定に当たり、現状の職員の持つ専門知識と職場環境(職場のIT・WEB環境)の資産を生かせる様に、12領域に分けて必要な情報を誰から入手したら良いか判り易く設定しており、達成度は高いと判断する。 4.医療機関BCP策定率の向上.は、1から3が実現された際の予想される結果として、「50%まで向上」を目指している。この実現に対しては、「病院長がBCPに対して理解と納得が得られる被災時医療機関のBCPを提示出来ることが、BCP策定の推進に結び付く」との想定に基づいて取り組んでいる。 最後の、5.将来的な医療機関BCP策定指標を残す.は、ツールをWEB上に無償公開することを前提に、利用機関を医療機関に限定して、一元性を担保して信頼性を高めることで、医療機関側の利用向上を図ることが、BCP策定率の向上ならびに将来的にも我が国における医療機関のBCPの質的向上に結び付くと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画の通り、「ICTを用いたBCP策定支援ツールの統合版を開発しWEB上で公開と評価」では、「BIA情報自動作成機能」ならびに前年度にインフラ別の単体版機能であった、ICTを用いた「BCP策定支援ツールの統合版」を開発して、BIA項目に「業務に必要なリソース(経営資源:人・サイト・技術・情報・供給)」を追加して、標準的なBIA情報の内容充実を目指すものである。この結果、「インフラ別BCP策定支援ツール」の実用性を引き上げると共に、統合版をWEB上に無償公開して利用してもらいながら評価を受けて成果物とする計画である。 次に、「BCP策定支援ツール提供後のBCP策定状況調査ならびにフィールドテスト」では、実施計画の「BCP策定支援ツール提供(後)の医療機関のBCP策定状況調査」より回答が得られた医療機関にて実施して成果物を提供する。さらに、この中から協力医療機関(10施設程度)に出向き、フィールドテストを実施して成果物の検証を行う。 最後に、「医療機関のBCP策定における障害要因と改善要因の作成と公開」として、WEBで無償公開して協力の得られたデータを基に、BCP策定支援ツール提供前後の推移と変化について分析・検討を加えて、医療機関のBCP策定率の向上に結び付いたかを検証するために「医療機関のBCP策定における障害要因と改善要因」を作成して論文等で社会へ還元する計画である。 これら、研究過程におけるアンケート調査、訪問調査、利用評価を成果物は、医療機関における新たなBCP策定の指標となり得る様に、データ母数を多くすることと、直接訪問調査の実施による不備データの解消を図る様に計画した。 最後に一連の研究成果は、医療機関のBCP策定前後の変化の内容と要因が分析・検証を重ねることで、確実に将来的に渡り我が国における医療機関のBCPの質的向上に結び付くと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越額が390,627円と算定されているが、当初平成24年度で実施予定の分担研究者分担金100,000円と謝金50,000円について平成25年度に実施するよう変更した。さらに、物品費と旅費ならびにその他より約240,627円が繰越金となった。 一方、ツール作成プログラム開発費は、アンケート設計時に訪問調査した3施設共通の面談課題事項として、「病院長に提示するBCPプランが、理解と納得感を得るためには、BCPの視覚的に捉える等の対応が必要で、そのためには、散布図と折れ線チャート図を織り交ぜて提示されることが最も判り易い」との指摘が新たに上がった。従って、平成25年度に実施予定としているプログラム開発(645,000円)においては、面談課題事項とした指摘内容を反映させるべく、繰越金の活用が必要となることも見込まれている。 平成25年度の研究費(繰越金を含む)は、1,190,627円である。使用内訳は、研究計画の通り、BCP策定支援ツールのプログラム開発に約645,000円、協力医療機関(10施設程度)への訪問フィールドテストに約200,000円、成果発表(約3回)に60,000円、分担研究者費用に200,000円、謝金に50,000円、BCP策定支援ツールの利用機関に対する成果物発送の通信費に約20,000円、成果物作成のためのBCP関係書籍購入に約15,000円を計画している。
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Research Products
(5 results)