2012 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞の形はなぜおかしいのか?-癌細胞の形態学的異型性の基盤となる分子機構の解明
Project/Area Number |
24659276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南雲 サチ子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80537069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
河口 直正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70224748)
森 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90467506)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 病理診断 / インテグリン / カドヘリン |
Research Abstract |
本研究は病理診断の基礎となる癌細胞の形態学的異型性の基盤を分子レベルで解明することを目的とするものである。初年度はin vitroにおける種々の培養癌細胞株、および手術で切除された種々の癌組織を用いて、接着分子を中心に細胞形態との関連を中心に検討を行った。細胞外マトリックスとの細胞接着に最重要なインテグリン各subunitの発現をRT-PCR、フローサイトメトリー、免疫蛍光染色で検討したところ、各インテグリンsubunitの発現は多様であり、腺癌・扁平上皮癌、あるいは癌細胞の分化度との相関関係は見られなかった。全体を通じて発現レベルの高いものはα2、α3、α5、α6、β1 subunitであった。低分化な接着性の悪い浮遊細胞でもインテグリンの発現が見られたことから、これらの細胞に対してはインテグリンからのシグナル伝達の検討が必要と考えられた。一方、細胞と細胞の間の接着に重要なカドヘリンを検討したところ、腺癌・扁平上皮癌の間に著明な差は見られなかったが、分化度が下がるにつれて、E-カドヘリンの発現の減弱およびN-カドヘリンの発現増加の傾向が見られた。次に、ヒト癌組織を用いた同様の検討で、インテグリンの各subunitの発現は細胞株同様で多様であり、分化度、組織型との一定の関連性は見られなかった。カドヘリンの検討では低分化癌細胞でE-カドヘリンの発現の減少傾向は細胞株と同様であるが、癌組織での発現レベルの方が全体的によく保持されていた。また、N-カドヘリンの発現は細胞株に比べて少なく、少数の癌細胞で陽性を認めるのみであった。以上の結果から、癌細胞の組織構築にはインテグリン自体が直接的に作用しているよりは、下流のシグナルが重要であること、カドヘリンは細胞間の接着を通じて、形態に影響を及ぼしていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は病理診断で重要な構造異型を中心に検討を行い、接着分子インテグリンの発現レベルと腺癌・扁平上皮癌、癌細胞の分化度との関連性は見られなかった。癌細胞の分化度が下がると細胞外マトリックスとの接着性は減弱するので、インテグリン自体の発現レベルよりも、下流のシグナルも含めた機能が重要であると考えれる。一方、接着分子カドヘリンは癌細胞の分化度と密接に関連する結果が得られた。癌細胞株とヒト癌組織ではN-カドヘリンの発現頻度が多少異なるが、大きな傾向は一致しており、カドヘリンの発現レベルが細胞間接着を通して、癌細胞どうしの形態形成に重要であると考えられた。癌細胞株の実験結果を踏まえて、必要ならヌードマウスに接種してin vivoにおける発現も調べる計画もはてていたが、癌細胞株およびヒト癌組織を用いた検討で一致した結果が得られたので、in vivoにおける発現の検討はあまり重要でないと考え、実施しなかった。初年度の研究成果としては当初の目的をほぼ達成し、満足すべきものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は構造異型を中心に検討を行ったが、次年度は病理診断のもう1つの柱である細胞異型、特に核の異型に着目して、クロマチン制御、ヒストン修飾、核膜タンパク質などの検討を中心に実施する予定である。初年度の結果はある程度、研究前に予想されたことであったが、癌細胞の核異型に関しての検討はほとんどなされておらずどのような研究結果が出るか、非常に興味深いと考えられる。検討する分子が多数になるので、対象を比較的しぼって行う必要があると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、タンパクレベルでの検討に必要な抗体、分子生物学的検討に必要な試薬、種々の癌細胞株およびその培養に必要な消耗品、病理学的・生化学的検討に必要なガラス器具などの消耗品の購入に研究費を使用する。以上の消耗品費として研究費をできるだけ使用したいので、学会へ参加しての学会発表、情報収集、国内外の調査研究はできるだけおさえたい。研究補助などの謝金、会議費等に一部を使用する予定である。
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