2013 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬は本当に受容体結合薬物であるのか:ホタル発光酵素のカロリメトリー
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24659698
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松木 均 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40229448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 伸岳 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (00363135)
後藤 優樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (30507455)
西本 真琴 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (70609057)
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Keywords | ルシフェラーゼ / 吸入麻酔薬 / 脂肪酸 / アデノシン3リン酸 / 示差走査熱量測定 / 等温滴定熱量測定 / 特異的および非特異的相互作用 / 誘導適合 |
Research Abstract |
前年度、示差走査熱量(DSC)測定により、ホタル発光酵素ルシフェラーゼ(FFL)のリガンド感受性はATPの存在により大きく変化することを見出した。今回、さらに詳しく調査してみたところ、FFLの麻酔薬クロロホルムによる不安定化(アンフォールディング)はATPの存在により増大したが、拮抗阻害剤であるデカン酸の安定化(フォールデング)はATPの存在にはほとんど依存しなかった。また、デカン酸存在下において実施した同様な実験からは、デカン酸の存在によってもFFLのクロロホルム感受性は増大し、デカン酸はATPと同様な効果があることがわかった。 等温滴定熱量(ITC)測定では、FFLの水への低い溶解性と麻酔薬との小さい結合熱から実験条件を策定するのに時間を要したが、麻酔薬ハロセンを用いて、FFLと麻酔薬の結合熱の測定に初めて成功した。FFLとハロセンの結合は発熱反応となり、ハロセン濃度依存的に熱量が飽和したのに対して、FFLとデカン酸の結合は麻酔薬の場合とは正反対に吸熱反応を示し、その熱量はある濃度範囲で飽和した。熱力学的解析より決定した結合定数はデカン酸がハロセンよりも大きく、結合数はハロセンでは数分子程度、デカン酸では1分子以下となった。 これら熱量測定データをX線解析により得られているFFLの構造データと比較した。結果、FFLはATPだけではなく拮抗阻害剤の結合によっても誘導適合を起こし、その形を変化させるためこれらリガンド非存在下と存在下では麻酔薬感受性が異なること、およびFFLへの麻酔薬結合はFFLを低エネルギー化(安定化)させるが、拮抗阻害剤の結合は逆に高エネルギー化(安定化)させることが明らかとなった。以上の結果より、麻酔薬の結合様式は拮抗阻害剤のものとは顕著に異なり、FFL中に麻酔薬結合部位が存在する可能性は低いことを結論づけた。
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Research Products
(33 results)