2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平苔癬に対する新規疾患病因論とそれに基づく治療戦略
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24659896
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
東 雅之 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20144983)
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Keywords | 口腔扁平苔癬 / 基底細胞 / 基底膜 / 性ホルモン |
Research Abstract |
本研究においては、口腔扁平苔癬の病期に対応した3つの治療法を構築することを目的とした。1番目の治療法は病変初期段階である基底細胞直下へのリンパ球浸潤を阻止する方法である。この研究成果として、不死化正常口腔粘膜細胞であるRT7細胞をTNF-aあるいはIL-1bにて処理したところ、androgen変換酵素である-a-reductaseの発現低下が認められたが、estrogen変換酵素であるaromataseの発現には変化がみられなかった。すなわちこの事は、口腔粘膜細胞においてandrogen/estrogenのバランスが乱れたことを示唆している。また、TNF-a刺激RT7細胞にDHEAを添加することにより、androgen/estrogen imbalanceを修正することが可能であった。2番目の治療法は病変中期段階である基底細胞の融解変性(アノイキス)を阻止する方法である。この研究成果として、RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、転写因子NF-kBの活性化を介して基底膜分解酵素であるMMP-9産生の増強が認められた。そこで、NF-kBの活性化を阻止する作用を有するセファランチンにてTNF-a刺激RT7細胞を処理したところ、MMP-9の産生が抑制された。すなわちこの事は、セファランチンにて基底膜の分解が阻止され、基底細胞のアノイキスを抑制することが可能であることを示唆している。3番目の治療法は病変後期である上皮細胞の角化異常を阻止する方法である。この研究成果として、RT7細胞をTNF-aにて処理することにより、細胞分化のマーカーであるインボルクリンの発現低下が認められた。そこで抗TNF-a製剤にてRT7細胞を処理することにより、インボルクリンの発現低下の回復がみられた。すなわちこの事は、抗TNF-a製剤による分化抑制の解除がみられることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度、平成25年度の研究計画である「培養口腔粘膜上皮細胞における性ホルモン代謝酵素群の検索」および「培養口腔粘膜上皮細胞のMMP-9産生に及ぼすサイトカインの影響の検索」さらに「培養口腔粘膜上皮細胞の増殖・分化に及ぼすサイトカインの影響の検索」については、以下のような研究結果を得ている。すなわち、1.上皮細胞においては、核内に5-a-reductaseが発現しており、また細胞膜にはaromataseの発現が確認された。そしてTNF-aなどのサイトカイン処理により、aromataseの発現は細胞膜に確認されたが、5-a-reductaseは核内から細胞質内に変化しているのが認められた。2. 上皮細胞をTNF-aにて処理することにより、MMP-9の産生増強がみられた。3. 上皮細胞をTNF-aにて処理することにより、種々にサイトケラチンおよびインボルクリンの発現低下が確認された。今後さらに研究を推進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、口腔扁平苔癬患者および健常者の血清中と唾液中におけるサイトカイン濃度、DHEA濃度、aromatase活性と5-a-reductase活性さらにandrogenとestrogen濃度を測定することにより、サイトカインによるandrogen抑制機構を明らかにする予定である。 (次年度使用額が生じた理由と使用計画)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の使用額が当初の予定を超えるため。 健常人と患者からの血清と唾液を用いて、サイトカイン濃度、酵素活性、ホルモン濃度を測定することにより、サイトカインによるホルモン調節機構を解明する。
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Research Products
(20 results)