2013 Fiscal Year Research-status Report
酸感受性イオンチャネルをターゲットとした歯の移動時の疼痛制御への画期的アプローチ
Project/Area Number |
24659916
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友村 明人 明海大学, 歯学部, 教授 (60188810)
安達 一典 明海大学, 歯学部, 准教授 (20349963)
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Keywords | 疼痛 / 矯正歯科治療 / TRPV / イオンチャンネル |
Research Abstract |
歯科矯正学において矯正学的歯の移動に伴う疼痛は、今後解決を図らなくてはいけない重要な課題である。これまで疼痛に関しては、アンケート調査が中心で動物モデルを用いた評価がほとんどなかったため、研究の進歩に制約があった。そこで歯の移動によって誘発される侵害受容機構や口腔内組織の変性を、機能と器質の双方から定量評価可能な動物モデルを開発した。 Wister系雄性ラットの上顎の切歯と右側第一臼歯間にコイルスプリングを装着し、30~50 gの矯正力を負荷した。装着1、3、7日後(各々 D1、D3、D7と表記)に全身麻酔下で電気刺激用電極を上顎両側第一大臼歯部に留置し、同部刺激誘発開口反射の閾値を測定した。実験終了後、歯周組織と三叉神経節の標本を作製し、多核破骨細胞の局在とサテライトグリア細胞(SGC)活性を、各々TRAP染色とGFAP染色後に観察した。また移動歯周囲の知覚異常を解析するため、矯正装置を装着したラットの鼻根部をvon Frey hair刺激し、頭部回避閾値を浅麻酔下で検討した。 右側の開口反射誘発閾値は、D 1より左側に比較して有意に低下(56.5 ± 12.6 %)した。閾値低下はD 3でもみられたが、D7には消失した。同様に、右側の頭部回避閾値もD 1~D 3間に有意に低下(54.3 ± 62.9 %)したが、D7には差はなかった。多核破骨細胞はD1から観察され、D3~D7間に増加した。またD1には右側の三叉神経節にSGC活性がみられた。 開口反射閾値と頭部回避閾値の低下は、いずれも3日間程度継続し、1週間後には装置非装着側と同程度まで回復した。またこのような閾値の低下は、三叉神経節のSGC活性を随伴し、その後に多核破骨細胞の増加をみた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、開発された実験系において、多核破骨細胞の局在とサテライトグリア細胞(SGC)活性が確認されたことが評価される。すなわち、本実験系における発痛にSGCが関与することが明らかとなり、痛みの制御に対してSGCをターゲットとすることが有用ではないかと示唆された。 一方、この実験系における歯の移動距離がまだ定量化できておらず、今後その正確な評価は急務と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、前年度に引き続き,電気生理学的検討を継続しながら,開咬反射閾値変動に対する解剖学的裏付けを得るために,移動歯ならびにその周囲組織と三叉神経節の組織切片を作製し評価する。閾値変動や骨代謝に影響を及ぼすNSAIDsなどの治療薬ならびにTRPV1受容体アンタゴニストの効果の検討を適時始める。NSAIDsは歯科で頻用されるジクロフェナクナトリウム(1 mg/kg,i.p.,3回/日)とアセトアミノフェン(10 mg/kg,i.p. ,3回/日),TRPV1受容体アンタゴニストとしてcaspazepine (3 mg/kg,i.p. ,3回/日)を選択し,いずれも矯正装置装着直後から投与を開始する。前年度の結果から実験スケジュールは変動する可能性があるが,矯正装置装着後1日目,3日目,そして7日目に,前年度と同様の方法にて開口反射誘発閾値の変動と誘発される筋活動性の変化をオフライン解析し各薬物の鎮痛効果を測定する。 次いで,各ラットから得られる試料の,破骨細胞の浸潤程度,三叉神経節におけるマイクログリアの活動性変化に対する各薬物の経時的な効果を検討し,TRPV1受容体アンタゴニストの矯正に伴う痛みの有効性を明らかとする。 最後に今後の研究として大変重要なポイントは、歯の移動距離の定量化と言える。μCTを用いた方法、三次元カメラを用いた方法など様々な選択肢がある中で、精度が高く、再現性の高い測定法を確立することが急務となっている。
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