2012 Fiscal Year Research-status Report
質的研究における主観的テクスト解釈の問題を解決するための言語論的研究
Project/Area Number |
24659971
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
高木 廣文 東邦大学, 看護学部, 教授 (80150655)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 質的研究 / テクスト解釈 / 言語学 / 自然意味論メタ言語 / 構造主義科学論 |
Research Abstract |
質的研究で最も重要であるが、ほとんど議論されてきていないテクスト解釈における主観的解釈の問題が、実はそれほど勝手にテクスト解釈が「主観的に」行えるわけではないことを、これまでの哲学的論考や言語論の成果をもとに考察した。すなわち、これまでのテクスト解釈の理論的背景を再検討し、テクスト解釈と言語システムのラフな仮説的モデルを検討した。まず、言語システムに関しては、Saussure の一般言語学、および Chomsky による普遍文法、生成文法に関する書籍類を中心に文献検討を行った。 これらの結果をもとにして、心脳構造における言語システムの仮説的モデルを考案したが、このときテクスト解釈に関しては、竹田青嗣(2001)の提唱する『会話の信憑構造』を参考とし、また Wittgenstein の著作(論理哲学論考など)の中から言語に関する箇所を中心に検討した。これらをもとにして、言語解釈に関する仮説的なモデルを構築した。量的研究におけるコンピュータによる統計学による解析方法と、質的研究における心脳システムでのテクスト解釈プロセスに着目し、両者での相違点と類似点を明確にすることにより、テクスト解釈の科学的なモデル構築への検討が可能となった。さらに、言語構造論や自然意味論メタ言語を導入することで、テクスト解釈の新たな地平も明らかとなった。 この研究結果を、カナダのモントリオールで開催された 18th Qualitative Health Research Conference において口頭発表(30分、審査有)を行い、諸外国の専門家から意見聴取を行うことができた。また、日本国内においても同様な発表を行い、看護専門家や医療関係者から今後の研究に有用な意見聴取ができた。研究成果の一部については、ホームページ上に公表している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テクスト解釈においても、科学的理論である演繹的なモデルを心脳構造に仮定することにより、主観的解釈が同一言語に共通する解釈系からなり、そのためにそれほど勝手な解釈ではないことを考察することができた。 さらに、新たに言語構造論や自然意味論メタ言語の考えを導入することにより、テクスト解釈の新規な方法の提示が可能であると考えられた。これは、質的研究のテクスト解釈に、科学的でより一般性のある方法を提示できる可能性を示唆するものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続して行い、質的研究におけるテクスト解釈と心脳構造の言語システムのモデル構築を洗練する。とくに、テクスト解釈と言語構造に関する文献検討を行い、心脳構造でのテクスト解釈モデルの構築を目指す。 さらに、グラウンデッド・セオリー・アプローチにおけるテクスト解釈方法を言語構造理論から再解釈し、新たなシステマティックなテクスト解釈方法を提案する。この方法については、カナダのアルバータ大学で開催される Advances in Qualitative Methods 2013 Conference で発表し、諸外国の看護学、社会学、心理学などの質的研究の専門家、および哲学者などからの意見を収集する予定である。 また、他の国内外の学会においても情報収集を行い、テクスト解釈の新たな方法論を洗練する。得られた研究成果はホームページ上で公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
専門家への意見聴取のための謝金を使用しなかった。この理由は、国際学会などでの発表時に意見聴取ができたことと、通常の研究会や学会などでとくに謝金を必要とせずに、専門家から意見を伺えたためである。 今年度は、当初計画通り国内外の学会での発表や情報収集に主に経費を使用する。また必要とされるテクスト解釈に関する専門書の購入に当てる。
|
Research Products
(3 results)