2013 Fiscal Year Research-status Report
質的研究における主観的テクスト解釈の問題を解決するための言語論的研究
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24659971
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
高木 廣文 東邦大学, 看護学部, 教授 (80150655)
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Keywords | 質的研究 / 看護研究 / テクスト解釈 / 科学的言語学 / 構造主義科学論 / 概念的原子要素 / 脳科学 |
Research Abstract |
質的研究で最も重要であるが、科学的な議論が全くなされていないテクスト解釈における主観的解釈の問題について、テクスト解釈が勝手に「主観的に」行えるわけではないことを、哲学的論考や科学的言語学の成果をもとに、これまで考察してきた。主観的なテクスト解釈の理論的背景、とくにテクスト解釈と心脳構造における言語システムの関係について、科学的言語学に基づくテクスト解釈の方法論的な検討をした。科学的言語学については、Saussure の一般言語学、そして言語学に演繹的方法を初めて導入した Chomsky による普遍文法、生成文法に関する文献検討を行い、また仮想的なコンピュータシステムに基づいて、人工知能でのテクスト解釈の問題を考察し、現実の質的研究におけるテクスト解釈の問題と対比した。 これらの結果をもとにして、心脳構造における言語システムの仮説的モデルを考案したが、このときテクスト解釈に関しては、町田健(2011)による言語構造基礎論に基づく文構造の構成要素を考慮した。さらに、Anna Wierzbicka (1996)による自然意味論メタ言語の視点を導入することで、言語の概念的原子要素を用いたテクスト解釈の新たな方法論を提唱することの可能性を検討した。 この研究結果を、カナダのアルバータで開催された 12th Annual Advances of Qualitative Methods Conference(Edmonton, Canada, June 23, 2013)において口頭発表(30分、審査有)を行い、諸外国の専門家から意見聴取を行うことができた。 日本国内においては、招待講演や他大学でのFD研修等でこれらの成果を報告し、看護専門家や医療関係者から有用な意見聴取を行うことができた。研究成果の一部については、ホームページ上に公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テクスト解釈においても、科学的言語学であるChomskyによる生成文法モデルを心脳構造に仮定することにより、主観的解釈といわれるものが同一言語に共通する解釈系からなり、そのためにそれほど勝手な解釈はできないことを考察することができた。 新たに言語構造論や自然意味論メタ言語(概念的原子要素)の考えを導入し、さらに現代の脳科学の成果を考慮することにより、テクスト解釈の新規な方法の提示が可能であるものと考えられた。これは、質的研究のテクスト解釈に、さらに科学的でより一般性の高い方法を提供できる可能性を示唆するものであるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続して行い、質的研究におけるテクスト解釈と心脳構造の言語システムの科学的モデルを洗練し、構築を試みる。さらに、テクスト解釈と言語構造に関する文献検討を行い、心脳構造でのテクスト解釈モデルの構築を目指す。科学的言語論や脳科学から見たグラウンデッド・セオリー・アプローチにおけるテクスト解釈の方法論を再解釈し、新たなテクスト解釈の方法を提唱したい。 これらの方法については、カナダのアルバータやヴィトリアで開催される国際会議で専門家からの情報収集、また意見聴取を行い、さらに他の看護学、社会学、心理学などの質的研究の専門家、および哲学者などからも意見を収集する予定である。 他の国内外の学会においても情報収集を行い、テクスト解釈の新たな方法論を洗練する。得られた研究成果はホームページ上で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
専門家への意見聴取のための謝金を使用しなかったが、前年度同様、国際学会などでの発表時に意見聴取ができたことと、通常の研究会や学会などでとくに謝金を必要とせずに、専門家から意見を伺えたためである。 今年度は、当初計画通り国内外の学会への参加、および米国での専門家との意見交換を通じての情報収集に主に経費を使用する。また必要とされるテクスト解釈に関する専門書の購入に当てる。
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Research Products
(6 results)