2013 Fiscal Year Annual Research Report
歩行中に遂行される空間性情報の知覚に対する行動科学的検討
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24680068
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
樋口 貴広 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (30433171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚運動制御 / 歩行 / 障害物回避 / 時間特性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人間が狭い空間(隙間)を通り抜ける行動に着目して,接触回避のための行動(体幹回旋行動)が,隙間を通り抜ける何歩前に実行されているかを特定するための分析を行った.歩行中に隙間の大きさを変化できる装置(ムービングドア)を導入し,隙間を通過した時点の着地を起点として,その1歩前,2歩前,3歩前のいずれかの時点で,体幹回旋行動が必要ないほどに隙間幅を広げた.隙間幅を広げた後でも,広げる前の隙間幅に合わせて回避行動を始めたのがいつまでかを同定することを目的とした.10名の若齢健常者を対象に,歩行開始から4.5mの地点に隙間を設定して測定を行った.その結果,隙間を通過する2歩前の時点で,回旋行動が始まっていることが分かった.つまり,2歩前で隙間幅が広がっても,広がる前の隙間幅に合わせて体幹回旋行動が観察された.ただし2歩前の時点の場合,いったん始めた回旋行動を途中でやめることも可能であることが分かった.隙間を通過する1歩前であれば,動作の修正は不可能であった.逆に3歩前であれば,広がった隙間に基づき行動するため,回旋行動自体が起こらないこともわかった. 以上の結果から,隙間通過時の接触を回避するための体幹回旋行動は,隙間を通過する少なくとも2歩前には実行されていることが示唆された.この結果は,一般に私たちが歩行をする際に,あらゆる状況において少なくとも数歩先に視線を向けるという知見とも一致するものであり,理にかなったものであるといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害物を回避するための行動が,障害物に到達するおよそ2歩前に開始されているという情報は,新しい知見である.ムービングドアを導入することで,ある程度詳細に障害物回避行動の時間的な側面を記述できるということがわかり,今後より詳細な実験を立案が可能となった. 一方,前述の実験と並行して行っていた,障害物回避に関する状況判断に及ぼす動的視覚情報(オプティックフロー)の影響については,昨年度から引き続き5つの実験を行ったが, いずれも当初予想していた実験結果とは異なった.以上のことから,この実験については仮説そのものを再考して実験に取り組む.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って,隙間通過時における体幹回旋行動を対象とした視覚運動制御に関する研究を継続する.今後は特に,身体状況が変化した場合にでも,その状況に柔軟に適応し,最適な動作修正ができるメカニズムについてアプローチする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
隙間通過に関する状況判断課題について,脳血流を測定する実験を検討していたが,そのベースとなる行動実験において,仮説と異なり,実験ができなかった.このため,この実験に使用を予定していた予算を次年度に回すこととした. 博士研究員の雇用に予算を充当する.
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