2013 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオロドプシンを通して海洋生態系に流れ込む太陽光エネルギーの定量化
Project/Area Number |
24681003
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 晋 東京大学, 大気海洋研究所, 研究員 (00553108)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 生物海洋 / ロドプシン / 海洋細菌 / 物質循環 / 微生物ゲノム |
Research Abstract |
本研究では、近年明らかとなった“太陽光エネルギーを地球生態系へ結ぶ新しいパスウェイ”である海洋細菌の持つプロテオロドプシン(以下PR)の地球規模でのエネルギー収支を学際的かつ斬新な切り口から追求し、PRの重大な未解明問題である「太陽光エネルギーの利用効率」および「全海水中のPRタンパク質量」を詳細に解明し、地球規模エネルギー循環を理解するうえで緊急に必要とされている“PRを通して海洋生態系に流れ込む太陽光エネルギー量”の解明を最大の目的とする。 平成25年度は、これまでに分離したPR遺伝子を持つ細菌のゲノム解析および光がPR遺伝子発現に与える影響の予備実験を行った。ゲノム解析から、ゲノム上にPRの他にNa+をポンプするロドプシン(NaR)および機能未知ロドプシンを有する分離株が見つかった。大腸菌で異種発現させたロドプシンを用いて機能解析を行った結果、機能未知ロドプシンは光で塩化物イオン(Cl-)を細胞外から細胞内に輸送する機能を有することが明らかになった。これまでに、異なるポンプ型ロドプシンをゲノム上に3つ以上持つ株は報告が無く、本研究で初めてその存在が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度および本年度に実施した研究から、光でナトリウムイオン(Na+)および塩化物イオン(Cl-)を輸送する新しいロドプシンを海洋細菌から見いだし、海洋細菌の光エネルギー利用機構がこれまで考えられていた以上に多様であることを示した。またゲノムシーケンスも順調に進行中であり、平成26年度に予定している網羅的mRNAの解析も問題なく実施できると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、複数のロドプシン遺伝子を持つ分離株を用いた網羅的mRNAの解析(トランスクリプトーム解析)から各ロドプシンの生理的役割の解析を行う予定である。またゲノムシーケンスで得られたデータを用いて比較ゲノム解析を行い、海洋細菌ロドプシンの遺伝子進化機構の解析も実施予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越しが生じた理由は、平成25年度新学術領域「ゲノム支援」に採択され、分離株ゲノム解析のシーケンス支援を受け、当初予定よりもゲノム解析費用が抑えられたためである。 次年度は、これまでの研究でゲノム配列を決定した分離株を用いて、光が各ロドプシン遺伝子の発現に与える影響を調べるためmRNAをターゲットにした解析を実施予定である。
|
Research Products
(6 results)