2013 Fiscal Year Annual Research Report
人材マネジメントが企業のソーシャル・キャピタル形成に与える影響
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24683011
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西村 孝史 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (40508462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ソーシャル・キャピタル / 人材マネジメント / 柔軟性 / 内的整合性 / 雇用区分 / 多様な正社員 / 経営人材 / ミドルの役割 |
Research Abstract |
1.研究の目的 東日本大震災で日本の競争力として職場の連帯感が見直されつつある一方で,同時に職場の崩壊や個人主義化も指摘されている。こうした背景の1つに,多様な労働力の活用や成果主義の浸透,労使関係の個別化といった人材マネジメントが職場の連帯感(=ソーシャル・キャピタル)に影響を与えていることが考えられる。本研究では,企業のソーシャル・キャピタルを形成する要因として人材マネジメントに注目し,企業内でソーシャル・キャピタルを形成する要因を既存データと統合した大規模な質問票調査とインタビュー調査から多角的に明らかにすることである。 2.本研究の意義 本研究の意義は,企業内部のソーシャル・キャピタルの形成と蓄積過程に注目し,経営学,特に人材マネジメント分野の観点からソーシャル・キャピタル研究を大きく進めた点にある。 研究の結果,明らかになったのは次の4点である。第1に,ソーシャル・キャピタルの要素を既存研究のように,人のつながりを点と線でつなぐネットワーク分析の観点ではなく,資源の視点(資源動員,情報共有,規範)から明らかにすることで組織内における従業員のソーシャル・キャピタルの蓄積プロセスを明らかにしたこと。第2に,長期雇用・新卒採用という人事ポリシーは,資源動員に正の影響を与え,目標管理制度は,情報共有に正の影響を与えるなど,人事ポリシーや人事施策レベルで見た場合,ソーシャル・キャピタルを構成している資源の形成に与える影響が異なること,第3に,雇用形態に応じてソーシャル・キャピタル形成に影響を与える人材マネジメントが異なること,第4に,企業内のキャリアステージに応じてソーシャル・キャピタルの蓄積度合いが異なることを示した。上記の分析結果は,組織学習・組織開発,イノベーション研究などとも接合可能性を有しており,経営学の中で様々な形で発展していく可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度中に上場企業への質問票調査を実施すべく業者に見積もりを依頼していたが,以下の理由から調査の実施を次年度に延期したために達成度は③と評価する。本申請課題では,質問票調査のデータと公刊データを接合して企業のソーシャル・キャピタルの形成要因およびその効果について多面的に論じることを計画していた。しかし,基礎データとなる公刊データに不備・欠損が多く,経年データとして使用して因果を特定することが難しいことが明らかになったため,リサーチデザインを再設計する必要が生じた。特に,人材マネジメント研究で重要な変数である離職率や労働生産性は,公刊データでは欠損が多く,質問票調査に組み込む必要があり,結果として調査項目を全体的に見直すこととなったことから調査の実施が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
質問票調査を実施すべく,質問票の項目を特定化する。特に手元にある公刊データで捕捉しきれない変数を質問票で網羅できるように公刊データとの突合せを行いながら変数を特定する。 8月頃に調査を実施し,下期(10月)からデータを分析することで年度末での成果報告を行うことができるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,平成25年度中に企業への質問票査を実施する予定であった。本申請課題では,回収された質問票調査のデータと既存の公刊データを接合して企業のソーシャル・キャピタルの形成要因およびその効果について多面的に検討することを計画していた。 しかし,基礎データとして東洋経済新報社の『CSR企業総覧』を購入し,データの接合可能性を探っていたところ,この基礎データとなるCSR企業総覧のデータに不備・欠損が多く,CSR企業総覧のデータを複数年度組み合わせるとサンプルが半数近く落ちてしまうことが判明した(約1100社中,複数年度での使用が可能になるのは約500社)。特に人材マネジメントで重要な変数である離職率や労働生産性の欠損が激しいことから調査項目全体を再設計する必要が生じた。 次年度では,上記の対策を講じたうえで企業への質問票調査を実施する。特に離職率や労働生産性等の重要変数を直接企業に尋ねるために,当初予定していた質問項目を削減する必要がある。そのための検討に要する時間および企業がもっとも回答しやすい時期を勘案し,来年度の7月から8月を目処に調査を実施する。上記の使用予定額はすべて質問票調査に係る費用である。
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