2013 Fiscal Year Annual Research Report
台風環境場を大気海洋力学的に考慮した台風災害外力モデリングシステムの開発
Project/Area Number |
24686058
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉野 純 岐阜大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70377688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自然災害 / 防災 / 水工水理学 / 海岸工学 / 気象学 / 高潮 / 台風 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
本研究は,台風予測に特化した高効率で高精度な台風災害外力モデリングシステムを新たに開発し,可能最大級台風の上陸を想定した日本全国の台風災害ポテンシャルを評価することを目的としている. 昨年度までに構築された台風災害外力モデリングシステムを用いることで,2004年全29事例の台風を対象とした再現実験を完了している.詳細な精度検証により,従来手法であるEmanuel et al. (2004)の軸対称台風モデルに比べて,より精度が高いことが明らかとなっている.また,渦位の可逆性原理を利用した台風環境場設定法を開発することにより,台風環境場に対して気候変動の影響を考慮に入れた長期計算が可能であることも確認でき,次年度の本格的な擬似温暖化実験のための基礎技術が完成した.予備的な擬似温暖化実験として,海水面温度を擬似的に+2℃増加させた実験を行ったところ,現在気候に比べて大幅に台風強度は強まり,840hPaに近いスーパー台風が頻発する可能性が明らかとなっている. また,可能最大級台風の上陸確率を把握することを目的として,100年間における長期的な可能最低気圧と可能最大高潮の変動特性を評価した.台風災害外力モデリングシステムの適切な簡略化により,このような100年間にわたる長期計算を可能にした.温暖化シナリオ毎(SRES A2,A1B,および,B1)の100年間データベースの結果から,長期的にみれば,可能最低気圧は徐々に減少し(強度が強まり),可能最大高潮は徐々に増大するトレンドがみられた(約+50cm/100年).しかしながら,その標準偏差は極めて大きく(標準偏差70cm~100cm),悪条件が重なれば近い将来であっても可能最大規模(名古屋港で潮位偏差6~7m)の高潮災害が発生する可能性があるものと結論づけられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに,既に基礎となる台風災害外力モデリングシステムが完成しており,更に,次年度の目標であったデータベース整備に向けた準備段階に入っている.また,台風災害外力モデリングシステムの高効率化により,次年度の目標であった可能最大級台風の直撃確率まで既に議論を始めることができており,既に計画以上の成果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,可能最大級台風の直撃確率を評価することを目指す.直撃確率は,台風が対象地域に上陸する確率P1,台風が定常状態に達している確率P2,最悪規模に近い可能最低気圧である確率P3の3者の積で表現できる.現在気候に対しては過去の観測・解析データに基づき,また,将来気候に対してはCMIP3やCMIP5のマルチ気候モデルデータに基づいて評価する. また,得られた成果を有機的に組み合わせ完成した台風災害外力モデリングシステムを用いることで,複数の温暖化シナリオ(SRES A2,A1B,および,B1)に対して,広域にわたる台風災害ポテンシャルデータベースを構築し,広く一般に公開したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CMIP5マルチ気候モデルデータやの入手に遅れが生じているため,データ保存のための物品費やデータ整理のための人件費に残額が生じた. 代替データがあるためデータ入手の遅れは研究進捗に大きく影響しないが,次年度早々にも可及的速やかに入手を試み,残額を計画的に使用してゆきたい.
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Research Products
(28 results)