2013 Fiscal Year Annual Research Report
動力学的電子回折効果を現す非弾性散乱計算・実験が拓くスピンモーメントナノ計測
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24686070
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (00372532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電子磁気円2色性 / 電線エネルギー損失分光 / 超高圧走査透過電子顕微鏡 / 強磁性材料 / 国際研究者交流ウプサラ / 国際情報交流ユーリッヒ |
Research Abstract |
まず,電子磁気円2色性(EMCD)について,基本的な磁性金属の試験試料を電解研磨法により作成し,200kVと1000kVの加速電圧で電子エネルギー損失スペクトル(EELS)を測定を行った.Co及びFeにおいて,200kVにおいては2%程度,1000kVにおいては6%程度の割合で,磁気円2色性信号がL2,3端スペクトルに含有されていた.1000kVの加速電圧では比較的弾性散乱の平均自由行程が長く,EMCDの成因となる位相差が今回作成した比較的厚い(約35nm)の試料でもよく保持されていたものと考えられる.このことは,多波の動力学的回折を考慮したEELSの吸収端断面積の理論計算においても定性的に符合した.この成果は,4件の国際会議発表(1件の招待講演を含む),2件の国内会議招待講演,1件の論文誌で発表した. さらに,結晶粒径20nmほどのFeの多結晶薄膜において,1000kVでFe-L2,3ELNESをSTEMモードで測定し,その多数データの統計から定量的なEMCDシグナルを取得した.なお,試料調達の時間的理由から,こちらの実験が時期的には基本金属での1000kVのEMCD測定より先立って行われた.この結果について,2件の国内会議講演,1件の国際会議講演,1件の論文誌発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子磁気円2色性(EMCD)に関して実験的な検証,理論計算での裏付け,さらに,ナノ構造からの定量的測定に進んだ.EMCDに関しては,平成26年度に応用研究を展開する. 電子磁気線2色性(EMLD)に関しては,これまでエネルギー分解能が足りないため,測定を待機してきた.これまで使用していたものより約3倍良いエネルギー分解能をもつ新規TEM-EELS装置が学内共同設備に導入された.平成26年度にこの装置を用いてEMLDの検証を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
電子磁気円2色性(EMCD)においては,まだ不十分な実験的検証箇所をクリアする.それと並行して,強磁性酸化物や磁気記憶媒体の材料に応用する. 電子線2色性(EMLD)は,EMCDでこれまで測定を行ってきた基本的な磁性金属での測定を試み,反強磁性体の分析展開していく.エネルギー分解能が不足する場合は,内部磁場によるエネルギー分裂が大きな物質系を検討するとともに,学外の施設での実験を行う. 以上のような基本的な測定を確立しながら,より堅牢な測定技術を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電子磁気直線偏光2色性についての実験で要求されるエネルギー分解能を持った実験装置の使用が国内外において,立ち遅れたため. 新規に導入された学内共同設備で実験を行うための,設備使用料および,試験試料作成の外注に用いる.
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