2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞のがん化に関与するエンドサイトーシス機構の構造的基盤
Project/Area Number |
24687014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋田 睦 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70391977)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エンドサイトーシス / がん / 脂質膜 / X線結晶構造解析 / タンパク質 |
Research Abstract |
エンドサイトーシスは,真核細胞が細胞外から外部の物質を細胞内に取り込む基本的な仕組みの一つであり,体細胞における栄養摂取,シナプスにおけるシナプス小胞のリサイクリング,細胞表面受容体の内在化など,様々な基本生命現象を担っている.最近,エンドサイトーシス関連タンパク質が,細胞のがん化に深く関与しているという知見が蓄積してきているが,そのメカニズムには不明な点も多い.本研究は,特に細胞のがん化と関わりの深いエンドサイトーシス関連タンパク質の構造機能解析を行い,エンドサイトーシスによる細胞のがん化への関与のメカニズムの一端を解明することを目的とする.今年度は,クラスリン依存性エンドサイトーシスの最初のステップであるクラスリン凝集過程に関与すると考えられる,SGIP1とFCHo1の二種類のタンパク質のμhomology domain(μHD)の発現精製と結晶化を行った.その結果,SGIP1のμHDについて,実験室系のX線発生装置で約A分解能の回折点を与える単結晶を得た.これにより,今後のμHD単独の構造決定に道筋を付けるとともに,がん化と関連の深いEps15やintersectinなどのタンパク質との複合体の構造決定のための試料調製が順調に進んでいることを確認できた.さらに,Eps15のSGIP1結合領域の約260残基の領域を発現精製し,SGIP1のμHDとの解離定数をBiacoreを用いて決定したところ,解離定数はサブμMオーダーであり,両タンパク質は,比較的強く結合することが判明した.また,大腸菌の発現系を用いて,がん化に関与するエンドサイトーシス関連タンパク質であるPTRFの全長タンパク質の発現精製にも成功したが,結晶化に十分な量を得ることは出来なかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,SGIP1のμHDの結晶化に成功し,今後の構造決定に期待の持てる成果を得ている.また,Eps15とSGIP1が比較的強く結合することを見いだしており,今後結合領域を絞っていくことで,複合体の結晶化に向けた準備が整っていくことも期待できる.一方で,その他の目的タンパク質については,結晶が得られておらず,次年度以降により強力に研究を推進する必要があると考えられる.このようなことから,達成度をやや遅れているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,既に得られているSGIP1のμHD単体の構造決定を日指すとともに,Eps15やintersectinのμHDへの結合領域の絞り込みを行い,複合体の結晶化を目指す.また,PTRFやその相同タンパク質の発現精製に関しては,発現条件や発現フラグメントの検討や,他の発現系を試すことにより,結晶化に向く試料の調製を進める.さらに,PACSIN2とcaveolin-1の複合体の構造機能解析に関しては,caveolin-1のフラグメントをMBP融合タンパク質として発現させ,融合タンパク質ごと結晶化用の試料として用いるなどの工夫をして研究を推進する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,当初の計画では研究補助者を研究開始の早い段階で雇用する予定であり,実際に派遣会社から一名雇用したが,選任作業などに時間がかかり,雇用開始の時期が比較的遅くなり,12月からになってしまったため,直接経費次年度使用額が生じた.次年度は,年度初めから継続して研究補助者を雇用する予定であり,この直接経費次年度使用額と次年度の研究費を合わせて,研究補助者の人件費や大腸菌培養用の培地,結晶化試薬などの種々の消耗品の購入などに使用する予定である.
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Research Products
(3 results)