2012 Fiscal Year Research-status Report
嗜好・意思決定に関連した脳活動分析のための心理学的個人差を考慮した脳波分析法
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24700210
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
伊藤 伸一 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (90547655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 感性計測評価 / 脳波 / 心理工学 / 個人差 / 性格 / 自己組織化マップ |
Research Abstract |
本申請課題を遂行するに当たり、ヒトの嗜好に関連する脳波分析における課題の洗い出しおよびその研究成果をまとめた。具体的には、まず、脳波に混入される個人差を自己組織化マップ(SOM)にて表現する技術について学術論文にまとめている。ここでは、個人差がどのようにSOMで表現されるのかついて議論している。個人差には、個体間差と個体内差が存在する。SOMを応用・適用することで、個体内・間差のいずれも表現可能であることが示唆された。次に、心理学的個人差を考慮した脳波分析法について国内講演会論文にまとめている。ここでは、「心理学的個人差をヒトの性格差である」と仮定し、脳波の特徴量に加えて心理学的個人差を定量化し、SOMの入力として学習する技術を開発している。さらに、心理学的個人差をSOMの入力ではなく、SOM学習の過程に導入する改良型SOMを考案し、国内講演会論文および国際会議論文としてまとめた。ここでは、SOMの学習する領域を心理学的個人差によって制御する方法を採用している。以上の通り、ヒトの嗜好に関連した脳波計測実験のタスクに関する心理学的個人差を考慮した脳波分析法の有用性を確認した。 一方、意思決定に関する脳活動分析とそのための脳波分析法の考案に関しても、研究を進めている。具体的には、歩行動作に関して運動野・運動連合野ではなく前頭連合野(意思決定に関与する部位)を対象とし、歩行の意思を脳波により検出する技術を考案し、国際会議論文としてまとめた。 「多チャンネル脳波計測によるノイズ除去」および「最適な計測箇所の選抜」に関しては、被験者実験を実施し、新たな統計モデルと遺伝的アルゴリズムを組み合わせた手法を考案し、実装中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においては、以下に示す項目について取り組んでいる。 【課題1】多チャンネル脳波計測によるノイズ除去 脳波分析において、ノイズ除去は必須課題である。ここでいうノイズとは、アーチファクトをはじめとする脳波以外の信号に加えて、脳波分析に重要な情報を示す信号以外の信号を指す。この信号には個人差も含まれている。概ね、これらの信号は独立信号である場合が少なくないが、独立信号として観測できる保証がない。そこで、個人差を推測し、かつ、不完全な独立信号から重要な信号のみを抽出する手法の考案が有用となる。申請者は曖昧性を保持可能な灰色理論を独立成分分析法に導入した手法を考案し、実装中である。現在、考案手法の有効性を検証するためにベンチマーク問題の調査が難航している。 【課題2】最適な計測箇所の選抜 音楽刺激に対する嗜好・意思決定に関する脳活動には個人差が生じることは現象論として明らかである。その主な要因として性格の違いが挙げられる。性格差が生じる要因はDNAの違いおよび成長過程によって学習した内容の違いであると推測できる。これらの違いは脳活動において計測できると仮定すると、その違いは活動する部位の違いおよびその活動自体の違いで観測可能である。これらの仮説を実証するためには、多数の被験者および一人の被験者に対する複数回の実験が必要となる。現在、実験データの収集が難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、以下に示す項目について明らかにする。 【課題1】嗜好・意思決定に関与する脳活動部位の選抜とノイズ除去 平成24年度に引き続き、考案している灰色独立分析法の有用性を示すと共に、ノイズ除去法の確立を目指す。また、個人差を考慮し、嗜好・意思決定に関与する脳活動部位を最適化手法を応用・利用することで選定する。 【課題2】嗜好・意思決定に関連深い心理テスト項目の最適化 ヒトの性格の違いによって脳活動の個人差が生じるという仮説を立てている。その性格を定量的に評価する方法として質問紙法がある。質問紙法には様々な種類があり、嗜好・意思決定に深く関連する性格の項目は不明瞭である。そこで、複数の有力な質問紙法を用いてヒトの性格を定量評価すると共に、嗜好・意思決定に深く関連する質問項目を選抜する。 【課題3】心理学的個人差を導入した脳波分析法 上述する二つの課題の成果に基づいて、考案している改良型SOMを適用し、嗜好・意思決定に関連する脳活動分析法を確立する。このとき、課題2の成果に基づいてSOMの学習領域が変更される。また、改良型SOMに入力される脳波の特徴量は課題1の研究成果に基づく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費には以下を計上する。 【消耗品費】心理学的個人差(ヒトの性格診断)を定量化するための質問紙を計上する。ここでは、有償な3種類の心理テストを採用している。具体的には、新版TEGII、KT性格検査、YG性格検査のための質問紙である。 【旅費】旅費は調査研究および成果発表のために利用し、国内2回5万円/回(東京の講演会を想定)、国外1回35万円/回(アメリカ渡航を想定)として計上する。 【謝金】多数の被験者に対して複数回の被験者実験が必要となる。また、脳波計測実験時に複数人の研究協力者(大学院生)が必要となる。その謝金の一部を計上する。 【その他】海外の論文誌に投稿するための費用を計上する。
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Research Products
(5 results)