脊髄小脳変性症１型へのＤＮＡ損傷修復の関与の解析

2013 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 24700374
• Research Institution: Tokyo Medical and Dental University
• Principal Investigator: 田村 拓也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80396647)
• Keywords: 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / 脊髄小脳失調症1型 / ショウジョウバエ / システム生物学 / 寿命

Research Abstract

in vivo screeningとIPAネットワーク解析を組み合わせた解析の結果、脊髄小脳失調症1型（SCA1)の病態に関与する遺伝子を特定した。SCA1回復遺伝子を基に構成されたネットワークはHomologous recombinationやnon-homologous end joiningなど、複数のDNA損傷修復経路に関与するものであった。そして、その中心（コア）となる遺伝子がRPA1であることを見出した。また、SCA1の病態をさらに悪化させる遺伝子をもとに構成されたネットワークの中心はチェックポイントキナーゼ１（chk1)であった。
1．RPA1はSCA1モデルショウジョウバエの寿命短縮を回復するばかりでなく、実際にDNA損傷をも回復していた。生化学・組織学的解析の結果、SCA1の原因タンパクである変異型Ataxin1はRPA1と強く結合し、その機能を阻害していることが示唆された。マイクロイラディエーションという手法を用いて観察したところ、変異型Ataxin1を発現する細胞ではDNA損傷に応答したRPA1の損傷部位への集積が阻害されていた。RPA1が損傷部位に集積されないことにより、その後のDNA修復シグナルが伝達されないと考えられた。
2.chk1はSCA1病態を顕著に悪化させたが、正常なショウジョウバエに対しては効果を持たなかった。chk1の阻害剤をSCA1モデルショウジョウバエに投与したところ、寿命の延長が観察された。この事は、chk1がSCA1の病態シグナルを伝える分子であることを示唆している。また、SCA1の治療戦略の一端を示した結果でもある。

Research Products

• [Journal Article] Systems biology analysis of Drosophila in vivo screen data elucidates core networks for DNA damage repair in SCA1. (2014)
  • Author(s): Barclay SS, Tamura T, Ito H, Fujita K, Tagawa K, Shimamura T, Katsuta A, Shiwaku H, Sone M, Imoto S, Miyano S, Okazawa H.
  • Journal Title: Hum Mol Genet. Volume: 23(5) Pages: 1345-64
  • DOI: 10.1093/hmg/ddt524
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] A functional deficiency of TERA/VCP/p97 contributes to impaired DNA damage repair in multiple polyglutamine diseases. (2013)
  • Author(s): 1. Fujita, K., Nakamura, Y., Oka, T., Ito, H., Tamura, T., Tagawa, K., Sasabe, T., Katsuta, A., Motoki, K., Shiwaku, H., Sone, M., Yoshida, C., Katsuno, M., Eishi, Y., Murata, M., Taylor, JP., Wanker, EE., Kono, K., Tashiro, S., Sobue, G., La, Spada, AR., and Okazawa, H.
  • Journal Title: Nature Commun. Volume: 4 Pages: 1816
  • DOI: 10.1038/ncomms2828
  • Peer Reviewed
• [Presentation] 脊髄小脳失調症1型における複製依存的DNA修復の関与 (2014)
  • Author(s): 田村 拓也、岡澤 均
  • Organizer: 運動失調症の病態解明と治療法開発に関する研究班 平成25年度班会議
  • Place of Presentation: 都市センターホテル
  • Year and Date: 20140108-20140109
• [Presentation] 複数のポリグルタミン病におけるTERA/VCP/p97のDNA損傷修復機能不全 (2013)
  • Author(s): 藤田慶大、中村蓉子、岡努、伊藤日加瑠、田村拓也、田川一彦、笹邊俊和、勝田明寿香、本木和美、塩飽裕紀、曽根雅紀、吉田千里、岡澤均
  • Organizer: 第36回日本分子生物学会年会
  • Place of Presentation: 神戸ポートアイランド
  • Year and Date: 20131203-06
• [Presentation] TERA/VCP/p97のDNA修復機能不全は複数の神経変性疾患に関与する (2013)
  • Author(s): 藤田慶大、中村蓉子、岡努、伊藤日加瑠、田村拓也、田川一彦、岡澤均
  • Organizer: 第32回日本認知症学会学術集会
  • Place of Presentation: キッセイ文化ホール・松本市総合体育館
  • Year and Date: 20131108-10
• [Presentation] 神経変性疾患モデルショウジョウバエを用いたバイオインフォマティック解析 (2013)
  • Author(s): 田村拓也
  • Organizer: 第六回高次分子機能研究会
  • Place of Presentation: 軽井沢ホテル
  • Year and Date: 20130917-19
• [Presentation] 脊髄小脳変性症1 型におけるDNA損傷修復遺伝子の効果;in vivo screeningによる解析 (2013)
  • Author(s): 田村 拓也、Barclay S Sam、藤田 慶大、伊藤 日加瑠、本木 和美、島村 徹平、田川 一彦、勝田 明寿香、曽根 雅紀、井元 清哉、宮野 悟、岡澤 均
  • Organizer: 第５４回日本神経学会学術大会
  • Place of Presentation: 東京国際フォーラム
  • Year and Date: 20130529-20130601
• [Presentation] 脊髄小脳失調症1型の病態を制御するDNA損傷修復機構
  • Author(s): 8. 田村 拓也、Barclay S Sam、藤田 慶大、伊藤 日加瑠、本木 和美、島村 徹平、田川 一彦、勝田 明寿香、曽根 雅紀、井元 清哉、宮野 悟、岡澤 均
  • Organizer: 第6回CBIR若手インスパイアシンポジウム
  • Place of Presentation: 東京医科歯科大学
• [Presentation] 複数のポリグルタミン病におけるTERA/VCP/p97のDNA損傷修復機能不全
  • Author(s): 9. 藤田慶大、中村蓉子、岡努、伊藤日加瑠、田村拓也、田川一彦、笹邊俊和、勝田明寿香、本木和美、塩飽裕紀、曽根雅紀、吉田千里、岡澤均
  • Organizer: 第6回CBIR若手インスパイアシンポジウム
  • Place of Presentation: 東京医科歯科大学
• [Remarks] 複数の神経変性疾患にまたがる共通病態（シグナル）を解明
  • URL: http://www.tmd.ac.jp/press-release/20130508/
• [Remarks] 脊髄小脳失調症の病態を制御する遺伝子を発見
  • URL: http://www.jst.go.jp/pr/announce/20131031/index.html