2012 Fiscal Year Research-status Report
チロシンリン酸化シグナルを介したオリゴデンドロサイトの分化メカニズムの解明
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24700387
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
久保山 和哉 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, NIBBリサーチフェロー (20619671)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経科学 / プロテインチロシンホスファターゼ / チロシンリン酸化 / オリゴデンドロサイト / 脱髄疾患 / Rho |
Research Abstract |
本課題では、オリゴデンドロサイト(OLs)の分化・成熟・ミエリン形成や、脱髄疾患時における再ミエリン化に関わるチロシンリン酸化シグナル伝達機構を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、脱髄疾患病態モデル動物および、初代培養系を用いたOLsの分化・成熟への受容体型プロテインチロシン脱リン酸化酵素に属するPtprzの関与とシグナル機構の解明を目指した。 生後10日齢Ptprz欠損マウスでは野生型マウスに較べて、髄鞘の主要構成タンパク質であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の脳内発現量が有意に増加しており、その脳組織を電子顕微鏡観察すると神経繊維の髄鞘化が早く進んでいた。初代培養細胞系を用いた解析でも、Ptprz欠損マウス由来の細胞は、OLsへの分化が促進していることが確かめられた。 脱髄疾患病態モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導した結果、Ptprz欠損マウスでは、四肢麻痺などのEAE病態症状は野生型マウスに較べて軽微であり、脊髄組織における髄鞘損傷も軽減されていた。一方、EAE傷害部位への炎症性細胞の浸潤の程度は野生型マウスと差異がなく、EAEの症状の軽減は、免疫応答の差異に起因するものではないと考えられた。EAE病態マウス脊髄内におけるp190RhoGAPのリン酸化レベルはPtprz欠損マウスにおいて有意に上昇しており、Ptprzがp190RhoGAPを中心とした、チロシンリン酸化酵素に属するFynのカウンターパートとして機能し、OLsの分化・成熟、ミエリン化/再ミエリン化を抑制している知見を提供している。 これらの結果はPtprzが神経軸索が髄鞘で覆われる発達期がくるまでOLsを前駆細胞の状態にとどめておくストッパーのような働きを担い、EAE傷害においてもOLsの分化や髄鞘の形成/再形成に対して抑制的に働いていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに研究実施を行えている。 脱髄疾患時におけるPtprz関与のメカニズムについて、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に抵抗性を示すPtprz欠損マウスの組織学的検討を行い、ミエリン及びアクソンの損傷が軽微であることが判明している。一方で、ミクログリア/マクロファージ、T-細胞など炎症細胞の浸潤および、T-細胞の増殖能についてはPtprz欠損の影響を受けなかった。生後10日齢マウス脳内の電子顕微鏡観察の結果、Ptprzの欠損により神経繊維のミエリン化が早く進んでいた。 初代培養系を用いたオリゴデンドロサイト(OLs)の分化・成熟に関するPtprzシグナルについて、OLs系譜細胞にPtprzが局在することを確かめている。また、Ptprz欠損マウス由来OPCsからOLsへの分化は野生型マウス由来細胞と比べ時間的、形態学的に有意に早まっていることも示された。 EAE病態マウス脊髄内におけるp190RhoGAPのリン酸化レベルはPtprz欠損マウスにおいて有意に上昇しており、Ptprzがp190RhoGAPを中心とした、チロシンリン酸化酵素に属するFynのカウンターパートとして機能し、OLsの分化・成熟、ミエリン化/再ミエリン化を抑制している知見を提供している。 以上の成果は、査読済み科学雑誌にて発表した(PLoS ONE. 7: e48797, 2012)。
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Strategy for Future Research Activity |
上記知見を基に、Ptprzのリガンド分子であり、Ptprzの細胞内PTP活性に対して抑制的に作用するプレイオトロフィンのEAE病態に対する作用を検討する。また、オリゴデンドロサイト前駆細胞から成熟オリゴデンドロサイトへの分化・成熟への詳細を解析して、明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)