2012 Fiscal Year Research-status Report
運動出力の時空間パターンを生み出す神経回路基盤の解明
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24700395
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高坂 洋史 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (20431900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経回路 / ショウジョウバエ / 遺伝学 / 光遺伝学 / 運動回路 |
Research Abstract |
研究計画の項目に従って記述する。(1)per-INの局所的抑制による運動制御機構の解明、においては2つの結果を得た。これまでの研究から、per-INは運動神経細胞に抑制性シナプスを形成していると考えられる。本項目の目標は、運動パターンの生成におけるper-INの機能を明らかにすることである。まずper-INと運動神経細胞の活動の時間的な関係を調べるために、両方の細胞群にカルシウム感受性タンパク質GCaMPを発現させ活動イメージングを行なった。その結果、per-INは、同じ体節の運動神経細胞の活動よりも遅れて活動することが明らかになった。このことは、運動神経細胞がバースト状の活動を示した後少し遅れてper-INが運動神経細胞を抑制することで、バースト活動の時間的長さを制御していることを示唆する。そこで、この可能性を検討するために、per-INの活動を一過的に阻害したときにバーストの長さがどのように変化するかを電気生理学的手法を用いて調べた。まず解剖した幼虫がぜん動運動を行っている際の単一の運動神経細胞の出力を測定する実験系を構築した。そして、per-INの活動を光感受性塩化物イオンポンプであるハロロドプシンにより阻害したところ、バーストの時間が長くなることが明らかになった。このことは、per-INが運動神経細胞の活動パターンを時間的に制御することで、運動の速度調節を行っていることを示唆する。 (2) per-INの回路上流神経細胞の同定、においては、per-lexA系統の作成をすすめ、GRASP法が適用できる系統(GRASP-ready系統)の作成が完了した。この系統を用いてGRASP法によりper-INとシナプス結合している候補神経細胞の探索をすすめ、感覚神経細胞の求心性投射やオクトパミン作動性神経細胞が、per-INとシナプス結合していることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)per-INの局所的抑制による運動制御機構の解明、においては当初計画していた実験が順調に進み、per-INの阻害が運動出力に与える影響の測定に成功し、per-INの機能について具体的な仮説を得るまでに至った。(2)については当初計画していたper-lexA系統及びGRASP-ready系統の作成が完了したのに加えて、per-INの上流の探索を実際に開始することができ、実験系がうまく動作することが確認できたとともに、いくつかの候補神経細胞の同定にまで達した。したがって、それぞれの項目について計画通りに達成していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)per-INの局所的抑制による運動制御機構の解明、においては運動神経細胞からのパッチクランプ法による活動測定とチャネルロドプシンによるper-INの活動亢進を組み合わせることによって、per-INによる運動神経細胞制御をより精密に測定する。また、局所的光刺激を行うことにより、per-INと運動神経細胞が機能的にどのような配線図式に従っているのか(すなわち、per-INの投射が神経分節内で閉じているのか、隣接分節にも及んでいるのか、シナプス強度に差が見られるかなど)を明らかにする。(2) per-INの回路上流神経細胞の同定、においては、GRASP法によりper-INの上流神経細胞の探索をすすめる。特に、今年発現データが公開されたJanelia farm で作成されたGal4系統の中から少数の神経細胞で発現している系統を用いることで、per-INにどのような神経細胞が直接接続して、どのような神経細胞が接続していないのかを明らかにする。また、RNAi法を用いてぜん動運動やシナプス形態に関与する遺伝子を明らかにすることにより、per-INを取り巻く神経回路の全体像の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)per-INの局所的抑制による運動制御機構の解明、において電気生理学的測定に用いる消耗品を随時購入する。また、(2)per-INの回路上流神経細胞の同定、においてgal4系統やRNAi系統を購入する。また、研究成果を学会や論文で発表するのに必要な経費として使用する。
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Research Products
(10 results)