2012 Fiscal Year Research-status Report
学習が引き起こす海馬神経回路可塑性のin vivo二光子イメージング
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24700403
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 正晃 独立行政法人理化学研究所, 記憶メカニズム研究チーム, 研究員 (90518325)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / カルシウムイメージング / セルアセンブリ / 海馬 / マウス |
Research Abstract |
本年度は、仮想空間内に設定された直線路を歩行するときの海馬の場所細胞活動ダイナミクスをin vivo二光子カルシウムイメージングで明らかにした。 二光子レーザ-顕微鏡下に頭部固定した蛍光カルシウムセンサータンパク質発現トランスジェニックマウスに対し、顕微鏡周囲のスクリーンに投影された仮想直線路を歩行する訓練を数日間行った。この仮想直線路には、壁に異なるパターンを描いたり、直線路の近傍に目立つ物体を配置することで場所手がかりを設定した。このように訓練した動物について、仮想直線路内で歩行するときのCA1錐体細胞層の蛍光画像を約10分間経時的に取得した。得られた画像データを、新規画像解析プログラムによって解析すると、元の画像データから、数百個の錐体細胞の形態と蛍光強度変化の時系列が抽出された。これらの時系列データについて、細胞活動のタイミングとその時点の動物の仮想的な位置を解析したところ、全細胞のうち一部分の細胞集団のみがこのような場所特異的な活動を示すことが明らかとなった。またイメージング画像中での各細胞の位置から、このような場所細胞群の海馬神経回路内の解剖学的配置を明らかにした。続いて、これら場所細胞と非場所細胞の2つのグループについて、それぞれの細胞グループが歩行または安静時にどのように活動パターンを変化させているかを、活動時系列の相関解析などで明らかにした。 これらの一連の実験・解析手法の確立と得られた知見は、海馬の場所細胞のマップが学習によってどのように変化するかを明らかにする次年度の実験の基礎となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)仮想現実環境下で行動するマウスの海馬神経回路活動イメージング(2)新規画像解析プログラムによる画像データの自動解析、という本課題の2つの技術的な柱を確立することができた。これらの技術を用いて、マウス海馬の場所細胞活動ダイナミクスを明らかにすることができたことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。上記2つを優先することで先送りした局所電位とカルシウムイメージングの同時記録系の確立については、次年度に行う予定である
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に明らかにした仮想直線路での場所細胞活動ダイナミクスに新しいデータと解析結果を加え、論文にまとめて発表することを目指す。また、仮想場所学習課題の訓練の前後で得られた画像データの解析を行い、場所記憶の形成後に新たな神経活動の時空間的パターンが出現しているかどうかを明らかにする。新たな実験系の開発では、局所電位とカルシウムイメージングの同時記録法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、本課題開始後に採択された別の新たな研究課題の立ち上げという予期せぬ事情が生じたため、当初の研究費の使用計画の一部を次年度に繰り越した。次年度は、この未使用分と合わせて計画書に記載した消耗品などを購入するとともに、予定している電気生理学実験に使用する物品を必要に応じて購入する。また、これまで得られた成果を国際学会で発表するための旅費を支出する。
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Research Products
(3 results)