2012 Fiscal Year Research-status Report
3次元脳回路モデルの再構成技術と神経伝達物質のリアルタイム計測技術の開発
Project/Area Number |
24700485
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 郁郎 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (90516311)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 3次元培養 / 神経回路 / 組織モデル / 神経伝達物質 / カーボンナノチューブ / 多電極アレイ / 電気化学 |
Research Abstract |
本年度は、脳神経回路の3次元培養技術と細胞から放出される神経伝達物質をリアルタイムに計測可能な平面微小多電極アレイチップの開発を主に行った。具体的な成果は以下のとおりである。 1.脳神経回路の3次元培養技術の開発 大脳皮質の層構造を模倣する神経回路の3次元培養技術を開発した。PDMSマイクロチャンバに初代神経細胞を積層化させ、細胞体位置を制御し、コラーゲン繊維配向技術を用いて、神経突起の伸長方向を3次元空間内に制御した脳回路モデルを構築した。細胞体層のZ軸断面をHE染色した結果、約50μmの厚さであり細胞体密度は生体脳と同等であった。また、層間を伝播する活動電位のスピードを計測したところ、脳スライス大脳皮質における層間の伝播スピードと同等であった。また、細胞数、細胞種、神経突起の伸長方向を制御した3次元マイクロネットワークの構築技術を開発した。コラーゲンゲル上に神経細胞を播種後、培養中に細胞周りのコラーゲンゲルをレーザエッチングすることにより、他の細胞から隔離する技術である。本研究成果はLab on a chip誌の表紙に採択された。他の課題として、エキシマレーザ加工技術を用いた生体適合性材料の3次元空間内に細胞を埋め込む技術を開発した。 2.神経伝達物質をリアルタイム計測可能な平面微小多電極アレイの開発 ITO微小電極上へのカーボンナノチューブ(CNT)電気めっき技術を開発し、CNT微小平面多電極アレイを開発した。作製したCNT微小電極を用いて、1nMの濃度でドーパミンの検出に成功した。また、マウス脳スライス線条体部位から放出されるドーパミン、海馬スライスからのシナプス後電位、培養細胞からの活動電位のリアルタイム計測に成功した。In vitro神経細胞の活動電位、プレシナプス、ポストシナプスの機能を非侵襲かつリアルタイムに計測できる技術である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3次元培養技術の開発においては、当初の予定より研究成果があがり、4報の論文を書いた(3報採択、現在1報のリバイズ中である)。また、神経伝達物質の計測においては、実際の脳スライスからドーパミンをリアルタイム検出することに成功し、論文2報を投稿した(1報採択、現在1報のリバイズ中である)。上記6報の論文と多電極アレイを用いた応用研究(アミロイドβが及ぼす神経活動への影響とチモキノンによる保護作用)に関して1報論文を書いたため、本年度は計7報の論文を書いた。当初の計画以上に進展した根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した3次元培養技術の発展と新しい3次元培養技術を開発すると共に、3次元培養による神経細胞の成熟化を神経活動、各種イオンチャンネルの発現を指標に調べる。また、血管構造を組み込んだ3次元組織モデルの開発を行う予定である。神経伝達物質の計測技術は、より高感度を示す材料の検討を行う。得られた研究成果をできる限り迅速に論文投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に使用する消耗品費を主として使用するが、研究成果が出てきたため、論文投稿費と学会発表費に半額程度の50万円(今年度の直接経費:90万円)を使用する予定である。
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Research Products
(31 results)