2012 Fiscal Year Research-status Report
界面特性の異なる高密度DNAブラシを担持したナノ粒子の創製と細胞との相互作用評価
Project/Area Number |
24700488
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金山 直樹 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 基幹研究所研究員 (80377811)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DNA / ブラシ / 界面 |
Research Abstract |
本課題は,ナノ粒子表面に形成したDNAブラシの界面特性が,培養細胞との相互作用に及ぼす影響を評価することを目的とするものである。これまでに申請者は,ナノ粒子上に形成されたDNAブラシの界面特性が,最表層から約1ナノメートルの厚さの空間内における塩基対構造(3塩基対分に相当)を反映して変化することを報告してきたが,界面特性の評価は定性的なものであった。そこで今年度は,界面構造の異なるDNAブラシを担持したDNAナノ粒子を数種類調製し,各々のDNAブラシの界面特性の物理化学的手法による定量化,すなわちDNAブラシ界面の構造-物性相関を議論するための定量的指標の確立を目標とし研究を開始した。ブラントエンド,ダングリングエンド,ターミナルミスマッチ,ターミナルバルジなど,様々な界面構造のDNAブラシ層を有する金ナノ粒子(粒径:40ナノメートル)を調製した。Oshimaらにより提案されている,表面に透水性の高分子層を有する粒子の電気泳動挙動に関する理論式をもとに,ナノ粒子上のDNAブラシの“柔らかさ”(1/r値)の定量化を試みた。検討を開始した当初は,当該ナノ粒子の電気泳動挙動をキャピラリー電気泳動法により評価することを試みたが,高イオン強度条件における水の電気分解の影響を排除して電気泳動移動度を正確に評価することが困難であることが判った。現在,代替法として,高イオン強度に対応した電極系を採用した電気泳動光散乱装置を用いレーザードップラー法による評価を検討中である。また,従来検討を行ってきた金表面以外にも,窒化シリコン(SiN)基板表面へDNAブラシ層を高い再現性で構築する手法を確立し,表面・界面解析法の適用範囲を拡張することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のとおりブラントエンド,ダングリングエンド,ターミナルミスマッチ,ターミナルバルジなど,様々な界面構造のDNAブラシ層を有する金ナノ粒子(粒径:40ナノメートル)を設計し,そのライブラリーを構築することができた。表面に透水性の高分子層を有する粒子の電気泳動挙動に関するOshimaらの理論をもとにナノ粒子上のDNAブラシの“柔らかさ”(1/r値)の定量化に着手した。今年度の検討では,当該ナノ粒子の高イオン強度下における電気泳動挙動の評価が計画していた分析法で困難であることが判ったが,装置や測定法の改良により克服できるものと考えている。また,界面動電現象に依存しない界面特性評価に着手するため,反射干渉分光などで使用されるSiN基板上へDNAブラシ層を高い再現性で構築する手法を確立することに成功した。 一方,計画立案当初に想定していなかった成果も,本研究課題の遂行に付随して得られている。界面にチミン-チミンおよびシトシン-シトシンミスマッチ部位を有するDNAブラシ担持金ナノ粒子の分散安定性が,Hg(II)とAg(I)の2種類の金属イオンの組み合わせによって“論理的”に変化することを偶然見出し,新しい分子ロジックゲートの動作原理として投稿論文にまとめることができた。 以上の理由より,本計画研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き,DNAブラシ担持金ナノ粒子ライブラリーに対しOshimaらの理論に基づく電気泳動移動度解析を試み,DNAブラシの界面特性の定量化を検討する。一方で,電気泳動法に依存しないDNAブラシの界面特性評価に関する検討,具体的にはSiN基板上に形成したDNAブラシの反射干渉分光法による特性解析に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究計画遂行過程において,研究計画立案時に想定していなかった困難に直面し,その対処・解決策の検討に予想以上の時間が掛かってしまったため,以降の段階で使用を計画していた設備備品の導入が大幅に遅れ,平成24年度未使用額が生じた。現在直面している困難を克服し,研究計画を遂行するための対応策は複数案準備しており,次年度では見通しが立ち次第,平成24年度未使用額分で導入が遅れている設備備品を出来る限り速やかに導入する予定である。また,その他の研究費は研究の遂行上必要となる物品・試薬の購入,および研究成果の発表に使用する計画である。
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