2012 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞後遺症に対する脳循環・代謝改善薬(ニセルゴリン)の気分障害への効果
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24700576
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
伊藤 英明 産業医科大学, 医学部, 助教 (30609201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ニセルゴリン / 脳卒中後うつ / ノルエピネフリントランスポーター / セロトニントランスポーター / 細胞 / マウス |
Research Abstract |
培養細胞を用いたモノアミントランスポーター機能に対するニセルゴリンの効果の検討については、初代培養副腎髄質細胞(ウシ副腎よりコラゲナーゼ処理により単離)およびSK-N-SH細胞にて、ニセルゴリンがノルアドレナリントランスポーター(NAT)機能を濃度依存的に抑制することが明らかとなった。またCOS-7細胞にセロトニントランスポーター(SERT)cDNAを導入したものを用いたニセルゴリンの作用を検討では、ニセルゴリン高濃度ではSERT機能が抑制されたが、臨床濃度では抑制されず、効果はなかったと考えた。SK-N-SH細胞における抑制の機序についての検討においては、親和性は変化させずに最大取り込み能力を減少させており、また結合実験では解離定数を変化させずに最大結合能を減少させた。以上より、ニセルゴリンは濃度依存的・非競合的にNET機能を抑制し、セロトニン機能については抑制しないことが明らかとなった。 またマウスを用いたニセルゴリンの抗うつ作用の評価については、Jcl-ICR系雄性マウスにニセルゴリン腹腔内投与後に抗うつ薬の薬効評価である強制水泳テストを施行したが、無動時間の平均時間が短くなる傾向はあったものの、有意な差は認められなかった。 ニセルゴリンの効能の1つとして、意欲低下(アパシー)に対する改善効果が挙げられている。これに対する薬理学的作用については今まで報告がないが、抗うつ薬の標的であるNET機能を抑制することにより、この作用を発揮している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画では、細胞およびマウスの実験でニセルゴリンの効能について検討予定であった。細胞については機序の検討も行っており、またマウスの研究についても結果が出ており、今後まだ検討の余地はあるが、おおむね予定通りの施行状況と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の検討については、SK-N-SH細胞での検討に絞ってさらに機序について検討する予定である。またマウスについては、濃度や条件を変更しながら検討予定である。また、ニセルゴリン投与後のマウスの検体を用いた脳組織中モノアミンやその代謝物の定量、神経栄養因子の発現変動についても、順次測定予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
抗体や試薬の購入および必要な機器の購入、学会発表のための旅費や、解析ソフトの購入に使用予定である。 物品費として計上していた研究用試薬や研究用器具の使用量が想定より少なかったため、繰越金が生じた。
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