2012 Fiscal Year Research-status Report
吃音の言語治療のための訓練音声合成および自動評価手法の開発
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24700582
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
越智 景子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (20623713)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 吃音 / 発話速度 / 言語訓練 |
Research Abstract |
吃音は発話に繰り返し・阻止・引き伸ばしといった非流暢が生じる状態である。近年の治療で広く実施されている流暢性促進訓練は幅広い年代の吃音児および吃音者に適用できるもので、復唱・斉唱・音読を行うと同時に、患者の発話速度の低減、やわらかい立ち上がりの発話などによって流暢性を高めるもので、その効果が実証されている。しかし、訓練室内では症状が改善した後も、日常場面への般化に至るためには長期間の通院を要する。そこで、患者が個々に自宅等で繰り返し練習を行い、治療の効果を高めることを目的とし、自動評価システムを作成し、日本語話者を対象とした評価を行った。患者が自身の発話状況を客観的に把握して発話の動作を改善できるようにすることを目指す。本研究が対象としたのは発話の速度を調整する訓練である。まず、合成音声によって速度調整の訓練を行う際の有効性を調べるため、非吃音被験者8名に3段階の速さの教示音声をそれぞれ1文2回ずつ追唱させて、その後できる限り速さを一定に保って音読を行う実験を行った。いずれも普段より遅い速度である。その結果、追唱直後も目標とする教示音声の速度よりは速く発声され、また、その後覚えた速さで音読を続けた場合後半でさらに速くなっていくことが分かった。したがって、非吃音の被験者であっても、普段とは異なる遅い速度に合わせ、一定に保って発話することは困難であることがわかった。テキストを指定した音読練習を想定し、読み上げ音声の発話速度のフィードバックシステムを作成した。連続音声認識器Julius(李, 2007)を用いて自動的に発話区間における1秒当たりのモーラ数を発話速度として算出し、速度に対応する記号と目標とする発話速度とを画面に表示するものである。非吃音被験者4名でフィードバックがない場合とある場合での音読における発話速度の調整を行う実験の結果、ある場合に目標に近い速度を達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
言語訓練の補助として使用する、発話の速度の調整を練習するインターフェースは作成し終えた。また、短期的な効果については評価実験によって確認することができた。 任意のテキストでの音声合成システムの作成には録音した音声を集めた音声データベースが必要であるが、実験によって、非吃音者でも速度調整が困難であることがわかった。したがってさまざまな速度での録音および音声合成は今後の課題である。 予算は、国際会議での発表が次年度以降になったため、一部24年度では執行しなかった分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
言語訓練に使用する教示音声のための音声合成技術を開発するに先立って、聴覚提示によって与えられた速度を維持できるかの実験を行ったところ、非吃音者であっても速度を低減自体が非吃音者でも困難であることがわかった。一般的に、任意のテキストでの音声合成システムの作成には、もととなる録音音声が必要となるが、一定の発話速度を保って発話することが困難であるため、発話速度を一定に保っての録音も容易ではないといえる。そこで、今年度は目標速度での復唱などをおこなった後に音声録音を行い、所望の速度で発話できているかどうかを検討する。録音した音声データベースの発話速度をもとに、発話速度と音響特徴量、韻律の特徴量の関係を分析する。分析結果をもとに、4段階程度の遅い発話を録音した音声のデータベースを構築し、音響的特徴、韻律的特徴の分析によって音声合成を行う。多段階の遅い発話を使用して、発話速度を遅く調整する言語訓練が行えるか検討する。 また、前年度の発話速度のフィードバックを行う練習システムを長期使用することによる効果を、吃音者を対象とした貸し出し実験によって行う。前後で言語評価を行うことにより、訓練の効果を測定する。さらに、訓練後の音声の自然性の評価を行う。訓練前後の評価結果とは別途、練習時の音声と練習した日の自己評価を記録する。自宅練習の記録データをもとに、速度調整の練習を繰り返したさい、速度の制御がどのように改善するかを調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
自宅練習のための情報端末およびマイク 80千円×3台 信号処理ソフトウェア 70千円、実験データ処理用コンピューター 500千円 被験者謝金 4千円×20人、データ解析人件費 1千円×60時間 学会参加費、旅費 700千円、論文校閲費 100千円、 学会参加が本年度に移ったこと、前年度の研究結果から、データ解析の前にさらに検討が必要となったため前年度の予算を本年度に使用する。
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Research Products
(1 results)