2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700621
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
福ヶ迫 善彦 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20398655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教師教育 / 学習内容 / フィードバック / 教師養成プログラム / pedagogical knowledge / content knowledge |
Research Abstract |
平成24年度は,学習内容に関する教師のフィードバック行動と学習成果との関係を事例的に分析したとともに,先行研究によって明らかにされた体育教師養成プログラムを比較・批判的に検討し,1年間を通じた教師養成プログラムを試案・実践した.具体的には次のとおりである. まず,教師のフィードバック行動に関して,諸条件(教師の教職歴,教材,単元計画,本時案,教具等)同じにした2単元を比較し,意図した学習成果を保証する教師のフィードバック行動の特徴を明らかにした.その結果,学習成果を保証する教師の授業では,学習時間,フィードバック総数に有意な差が認められなかったものの,学習内容に関わった具体的肯定的・矯正的フィードバックの頻度が有意に高く,つまずきの見られた子どもへ具体的フィードバックを与え,成功裏に学習できた際には,賞賛を与えていた.その一方で,学習成果を十分に保証できなかった教師は,一般的なフィードバックが多く,「ナイス」「いいよ」「がんばれ」など学習の状況へ変化を与えるようなフィードバックは見られなかった.2つの実践を比べると,すぐれた教師は学習内容を熟知し,加えて学習の中心となる教材の開発意図を十分に理解していることがうかがえ,内容に関する知識と指導する知識が備わっていたと考察できた.そこで,このすぐれた教師の授業映像の中で,子どものつまずきが見られた箇所を編集し,7つの状況関連的指導映像を作成した. 次に,この映像コンテンツを用いた大学院課程における教師養成プログラムを実施した.前期において,映像などを用いた講義形式の授業を行い,教授技術,特につまずきが生じた際の教師行動について講義した.後期では,前期を踏まえたマイクロティーチングを実施し,その後,実際の小学校や中学校の授業で指導した.その結果,学習内容に関する指導力(フィードバックの質・量)が高まったことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は1年間を通じて,大学院課程における体育教師養成プログラム試案を実施した.実施にあたって,先行論文や先行実践を十分に検討し行った.また,大学院課程ということを踏まえ,より内容的指導に関するプログラムを作成した. その結果,実際の小学校や中学校における介入授業で,多くのフィードバック行動がみられ,特に,学習内容に関する具体的な肯定的・矯正的フィードバックが出現した.このことは,研究協力者A大学体育科教育学専攻の准教授による,授業検討会における発言,授業参観者の発言からも読み取ることができた. この実践を行うにあたって,講義形式授業において,すぐれた教師のフィードバック行動を抽出した映像を用いたディベートが効果的に作用したと考えられる.その理由は,「教師の意図した学習成果(ILO's)を保証するための指導技術」に関する知識の変容をKJ法によって,前期授業1時間目と15時間目を比較したところ,授業学生の知識が構造化されたことが顕著に表れたためである.また,後期において,マイクロティーチングと省察をサイクルさせたことも効果があった. 24年度では諸外国の教師教育について調査した.計画では,提携校ニューヨーク州立大学へ調査する予定であったが,本務校業務との関連によって実施不能となった.そこで,本学提携校である台湾師範大学の教師教育について調査するとともに,学会において,韓国や台湾の体育教師教育の現状と課題について情報収集した.特に,インターンやマイクロティーチングといった実践的指導について学んだ. 24年度の課題は映像作成であったが,その作業と同時にプログラム試案を連関させて実践できたことから,研究の達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度に試みた体育教師養成プログラムについて,修正および実施する.また,平成24年度実施内容について,学会発表および学術論文へ投稿する.当初の計画に対して,介入授業の方法を修正する.その理由は,体育授業は教科活動であり,実施にかかわって多くの条件をクリアしなければならない.より実践機会を確保することが大きな課題となった. すぐれた教師の行動に関する映像,PCKに関する理論構造の検討を行う.映像では,作成した映像にテロップや脚注をつけるなど,課題を誇張する内容にする.PCKの概念構造は文献によって構造化を行ってきたが,対象学生の習得状況に鑑み,より具体的で平易な用語によって説明できる資料を作成する.これによって,講義形式授業を効果的にするとともに,マイクロティーチング形式授業へ強い連関性を持たせる.マイクロティーチング形式授業では,マイクロティーチング→省察をサイクルさせるとともに,子ども教室における模擬授業を実施する.子ども教室とは,本学地域講座の一つであり,平成24年度に実施した介入型授業よりも実施条件が低く,多くの実践機会を保証できる.なお,このプログラム実践では,大学生の補助を必要とする. また,24年度実施内容は,スポーツ教育学会で報告するとともに,学会誌へ投稿する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
提携校ニューヨーク州立大学へ調査する予定であったが,本務校業務との関連によって実施不能となった.そこで,本学提携校である台湾師範大学の教師教育について調査するとともに,学会において,韓国や台湾の体育教師教育の現状と課題について情報収集した.よって,旅費等に関して残金が発生した.また,25年度では,DVカメラを2台購入することから,翌年度以降の請求になった. 今年度,すぐれた教師の意思決定やフィードバック行動などを観察・分析するために,福岡県中学校の授業を撮影する.これは計画時より大きく修正した点である.その理由は,A中学校教諭は文部科学大臣より優秀教諭として表彰され,いくつもの著書・DVDを出版しており,内外に高く評価されている.実際,筆者も昨年度に視察し,その実践力を目の当たりにした.その構造を理解し解説するためには,単元を通じて観察する必要がある.そこで,1週間程度の授業視察を2回実施する.よって,交通費50,000円×2回=100,000(羽田―福岡;羽田―柏),宿泊8,000円×6日=48,000円×2回=96,000 マイクロティーチングや子ども教室における実践を撮影するため,DVテープおよびDVカメラを購入する.DVテープ800円×50本=40,000円,デジタルビデオカメラ CANON iVIS HF M52 60,000×2台=120,000円. 学会発表 日本体育学会 交通費50,000円(柏―滋賀),宿泊10,000円×3日=40,000円.スポーツ教育学会(東京) 交通費等5,000円.体育授業研究会(千葉) 交通費等5,000円. 実践型授業撮影および映像コンテンツ編集作業補助謝金60,000円
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