2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700676
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
権 学俊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20381650)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、天皇制とスポーツとの進行過程を歴史学、社会学、メディア論を含んだ総合的な視点を持ち込んで、近現代日本社会と植民地朝鮮・台湾・インドネシア等における天皇制とスポーツ・ナショナリズム・身体管理等を実証的・総合的に解明することである。 すなわち、天皇制とスポーツイベントを通した大衆動員のメカニズム、植民地支配の強化と同化、天皇制強化の一翼としてのスポーツ位置、国民統合・地域統合に適した象徴儀礼、地域政治の力学、スポーツ史上の位置等々にわたる分析を通じて、近現代日本社会と植民地社会の社会的特質を浮き彫りにするところにある。 このような研究目的に基づき、今年は戦前、戦後スポーツ・イベントに関する基礎的資史料の収集と分析を行うとともに、主に近代日本社会における天皇制とスポーツ、植民地朝鮮におけるスポーツと皇族との関わりについて研究を進めた。特に、植民地朝鮮のスポーツ・イベントに関するケース・スタディ、フィールド・ワークの方針を立て関連研究の調査を開始した。 今年は近代日本における天皇制とスポーツとの関係、すなわち、1920年代秩父宮をはじめとする皇族のスポーツ支援の狙いと特徴、東宮杯、天皇杯等政治的意味、皇族のスポーツ関与がどのような効果を収めたのかを究明した。また、植民地朝鮮における身体の国民化、規律化を明確にするため、(1)学校を中心として行われた体力章検定や教練、運動会、集団体操の意味、(2)厚生・健民運動や皇国臣民体操、朝鮮神宮体育大会、徴兵制などの身体政策の分析を試みた。今年の研究を通して、近代日本と植民地朝鮮ともに戦前スポーツイベントが天皇制と国家的な秩序への同意を強化し、国家との一体感を推し進める装置として巧妙に機能していったことが明らかになった。この学術研究成果は、韓国と日本の学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、研究目的にそって有効なアプローチを確立するために、近現代社会学・歴史学、スポーツ史、スポーツ社会学を中心とした関連分野の研究者との研究交流を行うとともに、スポーツ史のみならず歴史社会学的アプローチをふくめたアプローチ法を確立した。 今年の研究を通して、得られたものは少なくない。今年の研究では、あくまで実証的な検討に拠りながら、個々の事例研究に尽きない、スポーツと天皇制研究、国民統合研究を歴史的パースペクティブを備えて遂行された。旧「大日本帝国」の外地であった朝鮮、台湾、インドネシア、シンガポール等では、様々なスポーツイベントが開催されたが(特に朝鮮、台湾)、皇族たちが訪問・支援していることについては、ほとんど知られていないが、研究期間中、韓国を数回訪問し、植民地時代のスポーツと皇族とのかかわり、帝国日本が植民地支配のために行った身体管理政策について、朝鮮総督府の機関紙、地元新聞等関連資料を韓国の中央省庁をはじめ、国会図書館、公文書館で収集できたこと、関連専門家の聞き取り調査を行ったことは何よりも大きな成果・収穫である。 また、スポーツイベントのような大衆文化が果たす社会統合・国民統合のきわめて特徴的な機能を、天皇制との関わりを通して歴史的に究明する学際的アプローチを試みたこと、スポーツ一つを個別研究として仕上げることではなく、包括的分析、総合的分析を通じて、近代日本社会と植民地朝鮮の社会的特質、同調構造の動態と歴史変化とを浮き彫りにしようと試みたことは大きな収穫と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度研究は主に戦前日本社会の分析であったため、今後は戦後日本社会における天皇制とスポーツに焦点を当てて研究を進める。戦後象徴天皇制のもとでの天皇のパフォーマンスといえば、春の植樹祭および秋の国体の開会式出席がすぐ思い浮かぶが、(1)天皇の行幸・巡幸と国体関係を取り上げ、国体を象徴天皇のパフォーマンスの舞台として捉えるとともに、(2)天皇が深く関わった「東西対抗サッカー大会」「新憲法施行記念都民体育大会」を究明する。また、(3)天皇制とオリンピック(東京・札幌・長野) の分析、(4) 戦後大衆文化として活性化した相撲・柔道・野球・サッカー・テニス・剣道等各種目と天皇制との関わりについて分析を試みる。 さらに、植民地朝鮮における天皇制とスポーツについても分析を進めていきたい。特に、(1)近代日本における身体管理や国民づくりのあり方と比較し、植民地朝鮮における身体規律と動員の特質を明らかにし、(2)朝鮮総督府がどのような政策をとったか、強化された身体の規律化が植民地民衆の身体・精神にどのような刻印を残したか、(3)そして解放後(戦後)の南北朝鮮の政治・社会にいかなる影響を及ぼしたか、これらの問題を明らかにした上で、身体が持つ歴史性と社会性、身体の国民化、身体と植民地支配との関係を究明する。 また、(4)内地国民(日本国民)・外地国民(植民地国民)はそれをいかに(どのように)受容(受け入れた)したのか、民衆側の受容の諸力学を析出する。つまり、国家と民衆との緊張関係(同意、逸脱、抵抗など)を検討していく。また、(5)旧「大日本帝国」(植民地朝鮮、台湾、インドネシア、シンガポール等)のスポーツイベントの分析と近代日本スポーツイベントを対比する。これらを通じ、天皇制におけるスポーツ、スポーツにおける天皇制において、何が見落とされてきたのかを分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)