2012 Fiscal Year Research-status Report
運動で誘導される小胞体からのeIF2αリン酸化の骨格筋機能制御における役割
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24700698
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
三宅 雅人 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 特任助教 (30588976)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 骨格筋 / 肥満 / エネルギー消費 / 褐色脂肪 |
Research Abstract |
小胞体の内部環境の変化(小胞体ストレス)に適応するための応答シグナルは生体機能の制御や疾患発症に直接関与することが明らかとなってきている。本研究では小胞体ストレスによる小胞体ストレス応答シグナルのなかでも特にPERK-eIF2αリン酸化シグナルに着目して、骨格筋機能における役割を明らかにすることを目的とする。 本年度はまずマウスに運動負荷を与えたときの骨格筋での小胞体ストレスの発生について解析を行い、eIF2αのリン酸化が上昇することが確認され、小胞体ストレスが発生することを明らかにした。さらに薬剤(AP20187)依存的にPERK-eIF2αリン酸化シグナルを活性化できるFv2E-PERKを骨格筋特異的に発現させたトランスジェニック(TG)マウスを作製し、筋機能、肥満糖尿病に与える影響について解析を行った。TGマウスは無刺激でも野生型マウスよりeIF2αリン酸化が高かったため無刺激のTGマウスと野生型マウスを用いて検討した。TGマウスは野生型マウスと比べ体重、骨格筋重量、握力がわずかに低かった。トレッドミルトレーニングを用いた持久力試験を行ったところTGマウスと野生型マウスで差はなかった。これらマウスに高脂肪食を与えたところTGマウスは野生型マウスより体重、体脂肪率が低く、インスリン抵抗性の改善、血中脂質の低下、基礎代謝の上昇が見られ肥満抵抗性であった。骨格筋において筋線維型やミトコンドリア量、代謝関連遺伝子の発現などに差は無かったが、一方で褐色脂肪細胞での熱産生関連遺伝子の発現が上昇することがわかった。 以上のことから、PERK-eIF2αリン酸化シグナルは筋機能に明らかな影響を与えていないが、骨格筋からの分泌因子などによる何らかのシグナルを介して褐色脂肪細胞を活性化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つである運動負荷による骨格筋の小胞体ストレスの発生について順調に解析を行い、小胞体ストレスの発生を確認し当初の目的を達成できた。またトランスジェニックマウスを用いたPERK-eIF2αリン酸化シグナルの筋機能に与える影響についても運動、代謝に対する表現系の解析を順調に行い、結果を得ることが出来た。予想に反して骨格筋機能の変化は見られなかったもののその中で褐色脂肪細胞が活性化し基礎代謝が上昇した結果、肥満抵抗性となるという興味深い現象を発見することが出来た。さらに、本年度の内に来年度に行う予定であった表現系を担う分子メカニズムについての研究に着手しており、すでに予備的な結果はすでに得られている。以上のことから計画以上に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度であきらかとなったTGマウスの食事性肥満抵抗性の分子メカニズムについて解析を行う。まず、当初の研究計画に従ってマイクロアレイ解析を行う。用いるサンプルとして野生型マウス、TGマウス、AP20187を投与したTGマウスの骨格筋に加えて、筋芽細胞株C2C12にFv2E-PERK遺伝子を導入しAP20187で刺激したサンプルを用意する。本年度の結果より骨格筋の代謝に関連する遺伝子のみならず、PERK-eIF2αリン酸化シグナルで発現誘導される褐色脂肪細胞機能に関与する分泌因子などの遺伝子に着目し、解析を行う。得られた候補因子についてTGマウス骨格筋における発現や血漿濃度を調べる。また同時に得られた候補遺伝子の発現制御機構を明らかにするため、PERK-eIF2αリン酸化シグナルの下流で上昇することが知られている転写因子ATF4に着目し、候補遺伝子のプロモーターについて直接的に制御しうるかどうかをin silicoにて検討する。その結果得られた遺伝子についてルシフェラーゼアッセイ、クロマチン免疫沈降を行うことでATF4による直接の制御が存在することを確認する。また、骨格筋におけるアミノ酸代謝についての解析を進める。まず、TGマウス骨格筋や血漿においてアミノ酸濃度を測定する。さらにマイクロ解析などから得られた結果をもとにアミノ酸変動を誘導する主要な制御遺伝子群を同定する。さらに骨格筋の分化、萎縮に対する機能を解析するためにTGマウスに対して、神経毒の投与による筋再生モデル、講師懸垂による廃用性筋萎縮モデルを作製し骨格筋を組織学的に解析することでPERK-eIF2αリン酸化シグナルの機能を評価する。以上よりPERK-eIF2αリン酸化シグナルの筋機能における役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子メカニズムを解明するためのマイクロアレイ解析、マウスでの発現解析のためのRT-PCRやELISA、制御機構の解明のためのルシフェラーゼアッセイやクロマチン免疫沈降などの実験のための消耗品を購入するための費用として約70%を使用する。さらに本研究の成果を発表するための国内学会、海外学会の参加費用として20%を使用する。同様に論文公表のため英文校閲や投稿料として約10%を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)