2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における低たんぱく食への分岐鎖アミノ酸添加と運動による筋代謝改善効果
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24700839
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉田 卓矢 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80622448)
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Keywords | 慢性腎臓病 / 低たんぱく食 / 運動 / 分岐鎖アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究は低たんぱく食療法を行っている慢性腎臓病(CKD)患者の筋萎縮を抑制し、筋肉量を保持する方法を検討する基礎的研究である。初年度にはCKDモデルラットを作成し、低たんぱく食(6%たんぱく質含有)に飼料の重量あたり3%のBCAAを加えた食餌と軽度の歩行運動(1時間/日、5日/週)による筋タンパク代謝への効果を検討し、軽度の歩行運動は腎機能に影響を与えず、筋タンパク代謝の活性化の指標であるp70S6 kinaseのリン酸化を促進させることが明らかとなった。一方、3%のBCAAの添加はp70S6kinaseのリン酸化には影響せず、むしろ腎機能を低下させる恐れがあり、CKDモデルラットにおいて過剰なBCAAの摂取は避けるべきであると考えられた。そのため、CKDモデルラットにおけるBCAA摂取による筋タンパク代謝への効果は正しく評価できなかった。この結果を受けて平成25年度は、飼料中の窒素含有量の増加が腎機能の低下に影響することが考えられたため、BCAAの添加量を飼料中のたんぱく質含有量の6%のうち1%となるように減量して与え、BCAAと軽度の歩行運動による筋タンパク代謝への効果を検討した。その結果から以下の成果が得られた。①CKDモデルラットにたんぱく質含量6%のうち1%をBCAAに替えた飼料を与えても腎機能を悪化させなかった。②CKDモデルラットにおいてBCAAの摂取と軽度の歩行運動を併用した群では、運動のみの群よりもp70S6kinaseのリン酸化を促進し、筋タンパク代謝を活性化することが明らかとなった。以上の結果よりCKDモデルラットにおいて筋肉量の保持には軽度の運動を継続的に行い、低たんぱく食の範囲内でBCAAの添加を行うことで筋タンパク代謝の活性化を効率良く行える可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は低たんぱく食療法を行っている慢性腎臓病(CKD)患者の筋萎縮を抑制し、筋肉量を保持する方法を検討する基礎的研究である。当初予定していた補助事業期間の2年間でCKDモデルラットにおける継続的な運動とBCAA摂取の効果を明らかにし、論文を投稿する予定であったが、昨年度は当初の予定を変更してBCAAの投与量の検討を行ったため、実験の完了が1年遅れた。そのため達成度はやや遅れていると評価した。これまでにCKDモデルラットにおいて低たんぱく食療法に加え、低たんぱく食の範囲内でのBCAAの投与と軽度の歩行運動を併用することで筋タンパク代謝を相乗的に活性化することが明らかとなった。この結果を論文として発表するために補助事業期間を1年延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにCKDモデルラットを作成し、低たんぱく食へのBCAA添加と運動負荷による筋タンパク代謝への影響を検討した。その結果、低たんぱく食を摂取するCKDモデルラットにおいてBCAAの添加は、飼料中の窒素含量が過剰にならないように投与することが重要であることが明らかとなった。また継続的な運動はCKDの腎機能を悪化させることなく、筋タンパク代謝を活性化することやBCAAの摂取と併用することで運動による筋タンパク合成の活性化をさらに促進させることが示唆された。今後はこの結果を論文として報告する。また、CKDにおける筋タンパクの異化についてさらに検討するため筋肉の異化のマーカーとして知られている14kDaのアクチンフラグメントをWestern blotにて測定し、CKDでみられる筋肉の異化の亢進に対する運動とBCAA添加の予防効果も検討することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では論文の投稿に必要な経費まで申請している。平成25年度は実験結果について再現性の検討と追加実験を行ったため、研究結果をまとめるのが遅れた。また、新たに得られた結果を2014年7月の日本腎臓学会で発表する予定であり、論文の投稿、掲載料は次年度に必要となる。学会発表と論文の執筆が予定よりも遅くなったため、それに関わる費用は未使用であったため、次年度使用額が生じた。 日本腎臓学会への旅費と論文の執筆および掲載料に使用する予定である。日本腎臓学会の発表は演題が確定されている。また、論文は執筆中である。
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Research Products
(2 results)