2012 Fiscal Year Research-status Report
甲殻類アレルギーリスクと摂食方法の関係に関する研究
Project/Area Number |
24700864
|
Research Institution | National Fisheries University |
Principal Investigator |
臼井 将勝 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 講師 (50399656)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | エビアレルゲン / トロポミオシン / 抗原性 / 抗原構造 / 加熱 / 調理 / リスク |
Research Abstract |
【エビ主要アレルゲンの非加熱精製】エビ類の主要アレルゲンであるトロポミオシンを、解凍生クルマエビ可食部を試料とし、Kunimotoらの方法を一部改変した加熱と変性剤を用いない方法で精製した。すなわち、破砕したエビ可食部に抽出液を加え4℃にて一晩抽出し、硫安分画、等電点沈殿を行い粗精製物を得た。これをイオン交換クロマトグラフィーにてSDS-PAGEにて単一のバンドが得られるまで精製し、脱塩・凍結乾燥することで非加熱トロポミオシンが得らた。イムノブロットにてこれをクルマエビアレルゲンPen j 1と同定した。 【加熱・非加熱Pen j 1の二次構造解析】Pen j 1の二次構造解析を、円二色性分散計(CD)を用いて行った。タンパク質濃度が0.1%となるようにPBSに溶解し、25℃にて200~260nmにて測定した。その結果、100℃で10分間加熱した後に25℃に冷却した加熱Pen j 1と非加熱Pen j 1の間に二次構造の顕著な違いは見られなかった。さらに46℃、80℃での二次構造解析においても加熱、非加熱ともに同様の温度上昇に伴う構造変化が見られた。このことからPen j 1が高い構造可逆性を有するという知見が得られた 【加熱・非加熱Pen j 1のマウスでの負荷応答試験】加熱によるPen j 1の抗原性変化をPen j 1感作マウスへの負荷応答試験により評価した。すなわち、非加熱精製Pen j 1で感作したマウスを3群に分け、それぞれ加熱、非加熱Pen j 1、PBSのみのでboostし1週間後に血清中の抗Pen j 1抗体酸性レベル(TgE, 総IgG, IgG1, IgG2a)を測定した。その結果、非加熱群に比べて加熱群でIgG2aのみ産生量の有意な減少が見られたが、アレルギーリスクの低減化を示唆するものではなかった。このことから加熱処理が有効でないという知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究遂行に必須であるクルマエビアレルゲン(Pen j 1)の分離精製は順調に行え、計画通り十分量が確保可能となった。加熱によるPen j 1の抗原構造変化について考察するための二次構造解析でもその可逆構造を裏付ける有効なデータが得られた。さらに、マウス負荷試験においても加熱後に抗原性が維持されること、加熱がアレルギーリスク軽減に有効ではないことが示唆された。これらの結果により、熱安定アレルゲンの抗原構造について分子レベルで安定化機構が解明できた。 以上の研究成果を農芸化学会中四国支部大会、食品免疫学会大会にて発表し、さらに論文(タイトル:Contribution of Structural Reversibility to the Heat Stability of the Tropomyosin Shrimp Allergen)にまとめ英文誌Bioscience, Biotechnology, and Biochemistryに投稿し、受理された。 さらに25年度計画分の「各調理条件下でのトロポミオシンの抽出と定量」についても予備的実験を前倒しで行い、実験条件等を確立しつつある。 上述の通り、研究計画通りに進展し、さらに次年度に予定していた成果の公表(論文化)が達成できたことから当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度に続き,実験サンプルとなるクルマエビトロポミオシンの精製を随時行う。分離精製方法は24年度のものを基に改良の必要があればこれを行う。 【各調理条件下でのトロポミオシンの抽出と定量】加熱加工調理によるエビアレルギー発症リスクを調査するために、生・茹で・焼き・蒸し・揚げの加工調理を行ったエビにPBSを加え一定条件下で破砕し、トロポミオシンの抽出を行う。抽出液および残渣中のトロポミオシン濃度は市販のキットを用いて測定する。トロポミオシンの抽出・定量は客観性と特異性を持たせるために、厚生労働省通知に準拠した市販のトロポミオシン定量キット((株)ニッスイ社製)を用いる。鮮度については、活クルマエビを用いて、生鮮・冷蔵(24、48時間)・冷凍・腐敗(25℃,24時間)の経過を経た生エビについて同様に測定を行う。これらの結果より、食品レベルでのリスクの評価・比較を行う。 【トロポミオシン負荷量(投与抗原量)がアレルギー発症に及ぼす影響度合いの調査】抽出・定量実験結果に基づいて、あらかじめ精製トロポミオシンにて感作したBALB/cマウスに異なる抗原量でトロポミオシンの負荷を行い抽出・定量実験で得られた抗原量の差の意義を検討する。試験は特に差のあった条件の抗原量を基に試験を行う。皮下投与での血清中のトロポミオシン特異的IgE抗体量をELISAにて測定し、抗原量の差の意義を考察する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に用いる患者血清が輸入元の企業での在庫不足により購入できなかったため63,370円の残金が生じた。とはいえ、患者血清は長期保存が困難で、かつエビアレルゲンの同定に不可欠であるため25年度においても引き続き購入を計画しているため、残金を同目的にため使用する予定である。患者血清の購入が不可能な場合は、24年度の予備試験より不足すると予想されるトロポミオシン定量キットの購入費として使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Journal Article] Contribution of Structural Reversibility to the Heat Stability of the Tropomyosin Shrimp Allergen2013
Author(s)
Masakatsu USUI, Akihito HARADA, Takayuki ISHIMARU, Emiri SAKUMICHI, Fumihiko SARATANI, Chiho SATO-MINAMI, Hiroyuki AZAKAMI, Taiko MIYASAKI, Ken'ichi HANAOKA
-
Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: Vol.77 No.5
Pages: 12887-1-6
DOI
Peer Reviewed
-
-