2013 Fiscal Year Research-status Report
デジタルナラティブを利用した被災文化財情報の活用研究
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24700889
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
奥本 素子 総合研究大学院大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10571838)
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Keywords | 博物館学 / 被災資料 / ナラティブ |
Research Abstract |
本研究は、被災文化財修復記録の幅広い共有と活用を目的に、被災文化財修復記録の電子化と被災文化財に関する、市民の語り、専門家の視点、収蔵館の現状報告などの多様なデータを同期させた多次元データベースの構築を目指した。 そこで、様々な被災文化財修復記録を保存できるデータベース型ウェブページを構築した。そこでは、様々な情報を一元化できるとともに、一般向け公開情報もあり、専門家、非専門家がともに被災文化財修復過程を知ることができる。非専門家でも気軽に記録できるような形を、実際の文化財修復に携わっていた学生ボランティアへの聞き込みから調査し、ブログやエクセルといった親しみやすいツールを利用してウェブサイトへの記録化を実現した。 また、被災文化財聞き書きデータはデジタル化したものをさらに被災文化財資料展示において閲覧可能なテンプレートに落とし込み、展示内で公開した。これらの資料は直接ウェブ公開を行うためには個人情報が多いため、今後は量的なデータ処理を行い、広く一般の公開に即した形に整える。その活動の一環として、被災文化財の聞き書きデータを活用し、被災文化財の語りを通して鮎川地区の昔の暮らしを知るウェブアプリケーションの開発を進めている。平成24年度は聞き書きデータのデジタル化を行い、平成25年度はテキストマイニングを行い、語りの特徴を分析した。平成26年度にはデータ分析の結果をもとに、思い出と共に理解する民具資料ウェブサイトを開設し、その教育効果について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成25度に下記のような研究を実施した。 聞き書きシート情報の活用:25度は、これまで東北学院大学博物館にあった聞き書きシートのデジタル情報を展覧会場での閲覧に適した形に整えた。また、日誌のブログ化、カルテのデータベース化を行い、専門家ではない学生ボランティアでも、手軽に記録をデジタル化できる手段を整えた。カタリイトサイトの構築及び配信まカタリイト・プロジェクトは、東北学院大学博物館が行った鮎川収蔵庫の民具資料のレスキュー活動の記録(日誌、カルテ、画像)をデジタル化し、一般的な博物館関係者(保存科学以外の博物館職員や学芸員課程を履修中の学生など)に対し被災資料修復情報を共有していくことを目的にしている。カタリイトサイトでは、日誌、カルテ、画像といった違うメディア、違う内容のコンテンツ間の意味の連続性を見出し、一連の情報として提示することを目的とする。 平成25年度には、日誌情報とカルテ情報と聞き書き情報のデジタルコンテンツを反映させ、本プロジェクトの情報が一覧できるような形に整えた。また、これまでの活動動画、活動報告書等の記録も本サイトで、一括で閲覧できるよう機能を追加した。 聞き書きデータのテキストマイニング:聞き書きデータをテキストマイニングで分析し、語りの特徴を抽出した。その結果、歴史や文化というよりも、その土地の暮らしや誰が使っていたのかという家族の思い出を語る語りが多いことが分かった。またそのような語りは、資料への好感を深める解説となる可能性がプレテストによって明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、カタリイトサイトにおいて、聞き書きデータを分析し、その特徴を抽出した。その結果、通常の博物館資料解説とは異なる意味づけがなされていることが明らかになった。平成26年度はその特性を活用し、語りのデータを活用した資料理解を促進する教材作成に取り組む。 平成26年にデジタル化したデータを元に、実施する研究計画は以下の2点である。 計画1:聞き書きデータの分析と資料情報との関連性の整理/聞き書きデータをデジタル化するとともに、テキストマイニングを用いて本データを分析する。さらにそれらの特徴をもとに、資料情報と紐づけしたウェブアプリケーションの構築を行う。その際、単なるデータベースにとどまらず、インタラクティブに学習者が学べる教材にしていくことにより、学習効果を高めていく。具体的には、自分で各資料やデータをキュレーションでき、自分なりの被災資料に対する意味付けができるような教材を開発する。 計画2:教材の評価/開発した教材を、非専門家に使用してもらい、本教材の効果を検証する。具体的には、実験協力を得た教育機関における実験授業の実施、被験者を募ったユーザビリティテスト、ウェブアンケートを用いたウェブサイト閲覧者への調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウェブアプリケーションの開発計画が少々遅れたため。 ウェブアプリケーション開発費
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Research Products
(3 results)