2013 Fiscal Year Research-status Report
低線量放射線に関するリスクコミュニケーション―いわき市の市民活動を事例として
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24700920
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00595291)
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Keywords | 放射線 / 市民活動 / 不安 / SNS / リスクコミュニケーション / ネットワーク分析 / 知識測定 / 項目反応理論 |
Research Abstract |
福島県いわき市において低線量被曝の問題に取り組む市民活動について、当活動のソーシャルネットワーキングサービス上におけるコミュニケーションの分析を行った。社会ネットワーク分析とテキストマイニングの方法を用い、メンバー間のコミュニケーション頻度や書き込みトピックに関する分析を行った。この内容については2014年に開催される世界社会学会議で報告予定である。 この市民活動については、インフォーマントの都合で継続的な調査が困難になったため、その他の団体からの情報収集に加え、放射線の影響に対する市民の不安に関する意識調査を並行して行うことにした。予備的な調査として2013年11月に東京都在住の20~60代の男女を対象にインターネット調査を行った。この調査では福島第一原子力発電所事故による放射線の影響に対する不安度、購買行動、リスク認知などに関する質問項目に加え、放射線に関する知識を測定する7項目のクイズ形式の問題を設けた。この知識問題は2種類あり、各項目が同じ内容だが異なる表現を用いている。それにより質問の仕方により知識測定の結果が異なるかどうかを検証できる。結果として7項目中4項目で表現により正答率に有意な差が認められた。この研究については『科学技術コミュニケーション』誌に投稿し受理されている。 ソーシャルネットワーキングサービスの分析では原発事故後の市民間のリスクコミュニケーションについて、インターネットの果たす役割を明らかにできた。またコメント関係のネットワークとトピック間の語彙のネットワークを同時に分析する新手法を開発することができた。放射線への不安に関する調査では、従来の知識測定の問題点を指摘し改善策を示すとともに、放射線に関する知識と不安の関係について実証的な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いわき市の市民活動についてはソーシャルネットワーキングサービス上のコミュニケーションについて分析結果を出すことができた。また、放射線の影響に対する不安に関する市民の意識について予備的な調査を行い、知識測定法の検討や知識と不安の関係などについて実証的な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
いわき市の市民活動については、調査対象の幅を広げるなどして継続していく。放射線の不安に関する市民意識については、調査対象地、調査項目を拡充して本調査を実施する。具体的には福島県と東京都など異なる地点での比較、一般的信頼、政府への信頼、科学技術への信頼といった信頼度の項目、科学技術リテラシーに関する項目、放射線に関する対人コミュニケーションに関する項目などを追加した調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会出張旅費は勤務先の旅費で賄ったため不要となった。 次年度に実施予定の放射線の影響に対する市民の不安に関する本調査の費用の一部として使用する。
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Research Products
(4 results)