2012 Fiscal Year Research-status Report
富士山の永久凍土―その特性・分布・地形変化への影響―
Project/Area Number |
24700943
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 永久凍土 / 微気象 / 地形 / 気候変動 / 火山 |
Research Abstract |
本研究は,国内でもっとも寒冷な環境にあり永久凍土が存在する富士山山頂部において,地温の季節変化・経年変化と,地温を支配する諸要因(気温,日射,降雨,積雪,地盤の熱特性など)を観測し,それらの関係性を定量的に明らかにし,物理探査も援用して,これまで明らかではなかった富士山の永久凍土分布を求める。さらに地形変化を観測し,気候変化に伴う凍結融解状況の変化が,生態学的に日本唯一の上部高山帯とされる山頂部の地盤に与える影響を評価する。 とくに(A)永久凍土分布と(B)永久凍土環境下の崩壊地拡大を評価するために,2年間(2冬3夏),地温と多岐にわたる気象・地質・地形要素を観測し,各要素間の関係式を作成するとともに,GISを用いて空間的に拡張することを目指している。そのために当該年度は,携帯型掘削機による観測孔(3m,1ヵ所)掘削,データロガーを用いた地温と関連する気象要素の通年観測,走査型レーザー測量器を用いた測量(地形変化観測),二次元電気探査(ERT)を用いた凍土分布の調査を行った。その他,既存の地温測器のデータ回収・メンテナンス(6~10月)も実施した。調査の一部はNPOが管理する旧富士山測候所を活用して行った。また,GIS上で50mメッシュDEMから遮蔽物(雲・積雪)がない場合の山体上の日射量(日射量上限)分布図を作成し,風衝地(積雪が付きにくいところ)16地点において観測中の表層地温との対応関係を明らかにした。また,永久凍土観測点の地温と山頂気温の関係式を求め,測候所の観測記録から,過去の表層地温の変動について推定した。その結果は3月末の地理学会で発表したほか,2013年5月の地球惑星科学連合大会での発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請予算と交付額にギャップがあるため,カメラロガーの設置は見送ったが,それ以外では,天候にも恵まれ,おおよそ申請計画通りに調査が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
物理探査によって地盤の異方性が非常に大きいことが判明し,地形と地下構造の対応関係が容易につかないことが明らかになった。そのため,地形的特徴から地盤構造を特定し,永久凍土分布図に反映させることは難しい。そこで,より確率論的に,どの程度の割合で永久凍土が分布しえるかを示す図化を目指すことが重要と考えられた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・ロガーのデータ回収,測器の点検(5~10月)。 ・物理探査による地下情報の取得(8月)。 地温観測結果から,分布図作成時に参照される永久凍土有無の既知点を割り出す。富士山ライブカメラ画像で公開されているものを入手し,富士山各方位の積雪分布推移図を作成する。いずれもGIS上でDEMに重ね合わせて解析できるように処理し,斜面方位・標高との対応を調べる。前年度の日射量の解析結果と合わせて永久凍土分布図(第1版)を作成。 レーザー測量器による崩壊地上部の再測量(6月,9月)。落石観測のためのカメラロガー新設(10月)。得られた多時期の詳細地形図を重ね合わせ,落石・崩壊の発生場所・量を見積もる。
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Research Products
(7 results)