2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700966
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古室 暁義 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50512274)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 脳腫瘍幹細胞 / BMP |
Research Abstract |
脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い膠芽腫は、がんの進行にTGF-βが重要な役割を果たしていることが報告されている。当研究室から脳腫瘍幹細胞の未分化性の維持にTGF-βシグナルが関与していることを明らかにした(Ikushima et al. 2009)。一方で、TGF-βシグナルファミリー因子であるBMP (Bone Morphogenetic Protein) が脳腫瘍幹細胞の維持を抑制するという報告がある(Piccirillo SG. et al. 2006)。しかし、その後は研究が進んでおらず詳細なメカニズムは未だ不明なままであった。我々はBMPシグナルが脳腫瘍幹細胞 (TGS-01) に与える影響を検討した。その結果、BMP-4が脳腫瘍幹細胞の未分化性やいくつかの癌幹細胞マーカーの発現を阻害し、TGF-βとは相反する作用を持つことが確認できた。しかし、マウス頭蓋内移植モデルにおいて、BMP-4処理をしたTGS-01を移植しただけでは劇的な延命効果は得られなかった。そこで、さらにBMPシグナルを増強する目的で、BMPシグナル抑制因子をノックダウンした結果、脳腫瘍幹細胞を移植したマウスの生存率が上昇することが明らかとなった。BMPシグナルがどのように脳腫瘍幹細胞の未分化性や腫瘍形成能を阻害するかを検討するために、DNA microarrayやRNA-seqを行いBMPの新たな標的因子の同定に成功した。これまでもBMPによる脳腫瘍幹細胞の未分化性を阻害することは報告されていたものの、治療への応用は進んでいないのが現状である。今回の結果は脳腫瘍幹細胞を標的とした新たな治療法の確立として期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は脳腫瘍幹細胞の未分化性の制御を明らかにすることである。我々はTGF-βファミリー因子の一つであるBMPが脳腫瘍幹細胞 (TGS-01) の腫瘍形成能を抑制的に作用することをSphere形成の阻害や幹細胞マーカーの発現低下によって確認した。特にBMPのアイソフォームのうちBMP-4が顕著にCD133やOlig2などの発現を抑制していた。しかし、マウス脳腫瘍移植モデルにおいて、BMP-4処理したTGS-01では移植マウスの生存を有意に延長するには至らなかった。そこでBMP抑制因子の発現を調べたところTGS-01においてBMP-4により発現が顕著に誘導されていることを見出した。このことから、いくつかのBMP抑制因子の発現誘導が、BMPシグナルを減弱させ、治療効果を阻害していることが考えられた。そこでこれらのBMP抑制因子の発現を特異的なsiRNAによってノックダウンしたところ、in vitroにおいてはSphere形成を顕著に阻害し、癌幹細胞マーカーの発現を劇的に抑制した。さらに、in vivoにおいての検討でも、BMP-4とBMP抑制因子のsiRNAを併用処理したTGS-01では、脳腫瘍幹細胞移植マウスの生存率を上昇させることが分かった。BMPシグナルがいかなる機序によって腫瘍形成能を抑えているかを検討するために、BMP-4処理をしたTGS-01でDNA microarray、およびRNA-seqを行った。その結果、BMPシグナル関連因子、転写因子、増殖因子、ケモカインなど、様々な関連因子や新たなBMPの標的因子を同定することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
BMP-4処理をした脳腫瘍幹細胞TGS-01を用いて、DNA microarray、およびRNA-seqを行った。この結果の発現解析から様々なBMP標的因子を同定した。今後はBMP-4によって発現上昇、または発現低下する因子について抽出する。当研究室には脳腫瘍幹細胞 TGS-04も所有しており、TGS-01とTGS-04において、BMP-4によって共通して発現変動がみられる因子について絞り込む。発現上昇する因子については脳腫瘍幹細胞に強制発現を行い、発現低下する因子については特異的なsiRNAによってノックダウンを行う。強制発現やノックダウンによって脳腫瘍幹細胞への腫瘍形成能に与える影響を、in vitroにおいてはSphere形成阻害や 幹細胞マーカーの発現低下をもとに絞り込む。さらに、in vivoにおいても影響がある因子についてマウス頭蓋内移植モデルを用いて検討し、腫瘍形成能を抑制する因子を同定する。候補因子については、どのような機序によって腫瘍形成能を低下させるか、特異的なsiRNAでのノックダウンや阻害剤を用いて明らかにする。特に、転写因子、サイトカイン、ケモカイン、受容体などを中心に検討を進める。 BMP-4はすでに骨や軟骨の誘導因子として臨床応用されている。脳腫瘍への応用が可能となれば、その臨床的有用性は極めて高いと考えられる。今後は投与法などを工夫し治療効果が得られるか検討してゆく。今回の結果でBMPシグナル抑制因子をノックダウンした際に脳腫瘍移植マウスで治療効果が得られたことは大きな成果であった。今後は脳腫瘍幹細胞においてのDNA microarrayやRNA-seqで得られたBMPシグナル経路や標的遺伝子について明確にし、それらをターゲットにした治療法の開発を目指してゆく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(4 results)
-
[Presentation] BMP4 suppresses tumorigenic activity of glioma-initiating cells through loss of stemness properties2013
Author(s)
Akiyoshi Komuro, Hiroaki Ikushima, Satoshi Sakai, Yasushi Ino, Tomoki Todo, Nobuhito Saito, Tetsuro Watabe, Daizo Koinuma, Kohei Miyazono
Organizer
Ninth AACR-Japanese Cancer Association Joint Conference
Place of Presentation
Hyatt Regency Maui, Maui, HI, USA
Year and Date
20130221-20130225
-
-
-