2012 Fiscal Year Research-status Report
新規抗HSP90抗体を用いた抗腫瘍免疫療法の基盤研究
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24700992
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
水上 修作 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00508971)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | heat shock protein / 抗体 / クロスプレゼンテーション |
Research Abstract |
本年度中に、実験遂行の前提としていた細胞膜表面HSP90の6H8抗体による認識について確認を要する事項が生じたため、予定していた計画を行うことが出来なかった。 確認を要する事項とは、6H8が示していたDC2.4の細胞膜表面での強い染色効率はIgG2aという抗体サブクラスに起因するのではないかという点であり、検証を行った。 6H8F(ab')2抗体を作成後DC2.4の細胞膜表面を染色し6H8と比較したところ、6H8F(ab')2の染色効率は6H8と比較して著しく低いものであった。このことから6H8の染色効率はFc部分の影響を強く受けていたということがわかった。 当教室で作成した抗HSP90抗体ではIgG2aタイプのものは6H8のみであるがIgG1タイプのものは数多くあること、またIgG1タイプの抗体はIgG2aタイプのものと比較してFc依存性のバックグラウンドが低いことから、今後細胞膜表面HSP90を認識可能なIgG1タイプの抗体である5H12を用いて予定されていた実験を遂行する予定である。その際、IgG1アイソタイプコントロール抗体及び細胞膜表面HSP90を認識しない抗HSP90抗体である2A6を比較対象として用いる予定である。 このような問題は生じたが、Fc依存性の抗原によるクロスプレゼンテーションをin vivoにおいて(細胞膜表面HSP90を認識可能な)抗HSP90抗体が顕著に促進するという当初のコンセプト自体は揺るいではいない。 その理由としては、6H8で認められた促進効果は同量のIgG2aアイソタイプコントロール抗体では認められなかったこと、並びにこの促進効果は6H8F(ab')2を用いても6H8と同等かそれ以上に認められたことがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要にも記載したが、これまで用いてきた6H8抗体の細胞膜における染色にFc部分が与えていた影響が大きいということが明らかになったため、使用抗体の変更を迫られた点が最大の理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にも記載したが、細胞膜表面HSP90を認識可能なIgG1タイプの抗体である5H12を用いて予定されていた実験を遂行する予定である。(IgG1アイソタイプコントロール抗体及び細胞膜表面HSP90を認識しない抗HSP90抗体である2A6を比較対象として用いる。) また、5H12は細胞膜表面を認識可能ではあるが6H8とはHSP90における認識部位が異なる。そのため6H8のFc部分がIgG1タイプである抗体(6H8-mG1)も作成を行い、現在力価の確認、クローニングを行っている。5H12の方が自然な形の抗体であるため、こちらを可能であれば用いたいと考えているが、認識部位の違いから6H8と同様に使用できるかは定かではない。しかしながら、6H8-mG1に関してはこのような問題が無いため、遅滞は見せているものの実験の遂行は可能であると考えている。 また、抗原をNY-ESO-1に変更した際に使用する及びHLA-A2マウス及びNY-ESO-1発現腫瘍の準備はできているため、研究遂行の速度を上げることは可能であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の内訳としては、抗体作製に必要な細胞培養用試薬・腹水作製に用いるマウス・抗体及び抗原抗体複合体精製に用いるカラム等に加えて、一般的なプラスチックウェア、実際の実験に用いるマウスなどがあげられる。これらのものは当初の予定通り必要になる。 しかしながら、研究実績の概要等に記載した研究の遅れにより、より多くの抗体・マウスが必要になるという問題が生じる。この点に関しては抗体精製用カラムについてはより洗浄に注意し、1つのカラムの寿命を延ばすことによって克服できると考えている。また使用するマウスに関しては、購入するマウスのうち予定数よりも多くを繁殖用マウスにまわし自家繁殖を行う。自家繁殖したマウスの使用割合を増やすことによって、同額の研究費でも使用マウス数を増加させることができると考えている。 旅費・人件費・その他については、予定通りで問題ないと考える。学会発表及び実験結果の論文としての報告に備えた論文校閲などは費用として予定通り必要になるかと考える。 なお今回次年度使用額(4,006円)が生じたが、これは消化を第一に考えて年度内に使用するよりも、次年度に使用した方がより有益に研究費を使用できると考えたためである。
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