2012 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質の脱ヨウ素化酵素の阻害による新たな甲状腺ホルモン攪乱作用の解明
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24710071
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
清水 良 広島国際大学, 薬学部, 助教 (00570491)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脱ヨウ素化酵素 / 甲状腺ホルモン / 内分泌かく乱化学物質 / ハロゲン化合物 |
Research Abstract |
甲状腺ホルモンの代謝に関与する脱ヨウ素化酵素のヨードチロシン脱ヨウ素化酵素(IYD)およびヨードチロニン脱ヨウ素化酵素(DI)は、その基質の構造的要因から甲状腺ホルモンかく乱化学物質の新たなターゲットとなる可能性があるが、この点に着目した研究は未だ行われていない。本研究では、難燃剤、医療用医薬品、動物用医薬品、農薬、食品添加物などの多種多様なハロゲン含有環境化学物質を対象に、これら化学物質とその代謝物の脱ヨウ素化酵素活性の阻害作用を指標とした甲状腺ホルモンかく乱作用のリスク評価を行うことで、「甲状腺ホルモン代謝系のかく乱」という新たな甲状腺ホルモンかく乱作用の解明を目指した。まず、IYDを過剰発現させたHEK293T細胞を樹立し、この細胞ミクロソーム画分を用いてIYD活性阻害作用の評価系を構築した。この評価系を用い、様々なハロゲン化合物のIYD活性阻害作用を評価した。その結果、IYD活性阻害作用は、1)塩素化合物ではテトラクロロビスフェノールA(難燃剤)、トリクロサン(殺菌剤)、オキシクロザニド、ビチオノール(動物用駆虫薬)、2)臭素化合物ではテトラブロモビスフェノールA、水酸化PBDEs (難燃剤)、ベンズブロマロン(高尿酸血症治療薬)、フロキシンB(着色料)、3)ヨウ素化合物ではローズベンガル、エリスロシンB(着色料)などで認められた。これらの結果より、芳香環への水酸基およびハロゲン基の結合が、IYD活性阻害作用を示すための化学構造的要因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IYD過剰発現細胞株を用いたIYD活性阻害作用の評価系を用いて様々なハロゲン化合物のIYD活性阻害作用を評価した結果から、芳香環への水酸基およびハロゲン基の結合が、IYD活性阻害作用を示すための化学構造的要因であることを示した。これらの結果が示せたことで、当初計画通りにIYD活性阻害作用を指標としたin vitro甲状腺ホルモンかく乱作用の評価は初年度において終了した。しかしながら、初年度に予定していたもう一種の脱ヨウ素化酵素であるDIの活性阻害作用を指標としたin vitro甲状腺ホルモンかく乱作用の評価は、評価に必要なDI過剰発現細胞株の樹立と評価系の確立はほぼ終えたものの、被検物質を用いた評価はまだ行っていない。これらの進捗状況から、当初の計画通りよりはやや遅れているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
IYD活性阻害作用を指標としたin vitro甲状腺ホルモンかく乱作用の評価はほぼ終了し、もう一種の脱ヨウ素化酵素であるDI活性阻害作用の評価系もほぼ確立させた段階であるため、まずDI活性阻害作用を指標としたin vitro甲状腺ホルモンかく乱作用の評価を最優先に行う。被検物質はIYDにおける評価と同様の物質を用いる。 これらin vitro甲状腺ホルモンかく乱作用評価結果から、特にIYDまたはDI活性阻害作用が強く観察された化学物質を対象に、ラットなどの実験動物の甲状腺機能、発達および成長におよぼす影響を検証することで、in vivo甲状腺ホルモンかく乱作用評価を行う。In vivo評価が困難な場合、甲状腺細胞株を用いた解析も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
DI活性阻害作用の評価には高価な放射性同位体が必要であり、多種多様な化学物質のDI活性阻害作用の評価を行うためには多量の同位体を用いなければならない。そのため、この同位体を購入するための費用が次年度研究費全体のの3割を予想している。 また、次年度が本研究課題の研究期間の最終年度であることから、研究成果発表とそれに関連した費用(学会発表とその旅費・論文投稿料および英文校正費)が、次年度研究費全体の2割を予想している。 その他の研究費は、研究の遂行に必要な消耗品(試薬・器具類)の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)