2012 Fiscal Year Research-status Report
相関構造をもつ待ち行列モデルと集合的リスクモデルの漸近解析
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24710165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増山 博之 京都大学, 情報学研究科, 助教 (60378833)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 待ち行列 / 集合的リスクモデル / 希少事象確率 / 漸近解析 / GI/G/1型マルコフ連鎖 / 応用確率論 |
Research Abstract |
相関構造もつ待ち行列モデルと集合的リスクモデルにおける希少事象確率の理論的な評価に向け,平成24年度は当初の計画通り,2つの研究項目「(1) 累積過程の重裾ランダム時抽出の漸近解析」と「(2) GI/G/1型マルコフ連鎖の劣指数的漸近解析とその応用」に取り組んだ.研究項目(1)については,抽出時刻Tが累積過程B(t)と独立な場合,および両者が独立ではない場合のそれぞれについて,抽出時刻Tの裾がconsistently varying(無限次重裾的)であるという仮定のもとで,漸近公式 Pr(B(T)>bx)~Pr(T>x)の成立条件を示した.また,得られた結果を用いて,強い相関構造もつ有限バッファ待ち行列モデルのロス確率に関する新しい漸近公式を導出した.このロス率の漸近公式は,通信ネットワーク上に設置されるルータのバッファ設計に資すると期待される.研究項目(2)については,加法成分の周期に依存しない条件のもとで,定常分布の裾確率の劣指数的漸近公式(裾漸近公式と略記)を示した.ここで課された条件は関連研究で仮定されている条件よりも緩い.また,定常分布の確率関数の劣指数的漸近公式(局所漸近公式と略記)についても導出に成功した.研究代表者の知る限り,局所漸近公式を対象とした先行研究はない.さらに境界を除く状態群での遷移が閉じていない場合についても考え,裾漸近公式および局所漸近公式を示した.これにより,情報通信システムにおけるウイルスやトランザクションを削除するような「disaster」の到着がある待ち行列モデルへの応用が可能となった.なお,これと同様の結果は先行研究には見られない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は2つの研究項目「(1) 累積過程の重裾ランダム時抽出の漸近解析」と「(2) GI/G/1型マルコフ連鎖の劣指数的漸近解析とその応用」に取り組んだ.研究項目(1)については,ほぼ目標通りの研究成果が得られ,その内容の一部を国内研究会で発表した.さらに本項目に関連する研究成果全体をまとめた論文を国内英文誌に投稿した.一回目の査読審査では,得られた結果について概ね肯定的な評価を受けたが,論文の構成について大幅な改訂を求められ,現在は改訂版を再投稿し,再審査の結果待ちの状態である.また,研究項目(2)については,目標通りの研究成果が得られたので国内研究会で発表した後,その成果をまとめた論文は海外英文誌Stochastic Modelsに採録された.以上のことから,本研究計画の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,平成25年度は「(3) GI/G/1型マルコフ連鎖の切断とその誤差評価」と「(4) ブロック単調性を有するマルコフ連鎖の切断とその誤差評価」を行う予定にしていたが,研究項目(3)に関する予備的な考察から,末尾ブロック列増大切断法によって得られるGI/G/1型マルコフ連鎖の近似的な定常分布と元の定常分布との差を理論的に評価するという問題は,ブロック単調性を仮定しない場合,現在手持ちの数学的道具では解決が困難だとわかった.そこで,研究項目(3)に代わり,研究項目(2)の結果をさらに発展させる問題に取り組みたい.「9.研究実績の概要」で述べたように,研究項目(2)に関する成果として,いくつかの漸近公式を示すことができた.しかし,そのなかで最も汎用的な条件下で成立する漸近公式をある待ち行列モデルに適用したところ,得られる結果は全く別の数学的道具を用いて得られる結果と微妙に異なる(両者の適用条件が異なる).この違いを詳細に調べた結果,当該漸近公式の成立条件をさらに緩和するための着想を得ることができた.したがって,この問題の解決に着手しようと考えている.一方,研究項目(4)については当初の目標を達成する見通しがおおむね立っているので,予定通り研究を進めていくつもりである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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