2013 Fiscal Year Research-status Report
相関構造をもつ待ち行列モデルと集合的リスクモデルの漸近解析
Project/Area Number |
24710165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増山 博之 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (60378833)
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Keywords | 待ち行列 / 集合的リスクモデル / 希少事象確率 / 漸近解析 / ブロック構造化マルコフ連鎖 / GI/G/1型マルコフ連鎖 / 累積過程 / 応用確率論 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,相関構造もつ待ち行列モデルと集合的リスクモデルにおける希少事象確率の理論的評価に向け,「ブロック構造化マルコフ連鎖」や「ランダム抽出された累積過程」などの理論解析を行うことである.平成25年度では,まず,GI/G/1型マルコフ連鎖の定常分布に対する劣指数的漸近解析とその応用に取り組んだ.本研究項目については,平成24年度に網羅的な研究を行ったが,得られた漸近公式の一つがより緩い条件下で成立することを新たに示した.さらにその結果を用いて,マルコフ型集団到着過程を入力とする単一サーバ待ち行列の系内客数分布とマルコフ変調型G/G/1待ち行列の待ち時間分布に関する新しい劣指数的漸近公式を導出した.また,研究代表者らが過去に示したGI/G/1型マルコフ連鎖の重負荷極限公式の成立条件に不備があることが判明したため,適正な条件を改めて示し,関連する研究成果と合せて国内研究会で発表した.加えて,本年度は,ブロック単調性を有するブロック構造化マルコフ連鎖の切断誤差評価に関する研究も行った.セミマルコフ型待ち行列モデルは,しばしばブロック単調性を有するブロック構造化マルコフ連鎖に帰着される.一般に,ブロック構造化マルコフ連鎖は無限個のブロック行列で特徴付けられるため,定常分布を解析的に得るのはもちろん,数値計算を行うのも容易ではない.この問題に対する現実的な解決法の1つは,遷移確率行列が有限次元になるように切断し,その定常確率ベクトルを有限次元連立一次方程式の解として求めることである.研究代表者は,離散時間ブロック構造化マルコフ連鎖がブロック単調性と幾何的ドリフト条件を満たすという仮定の下で,最終ブロック列増大切断によって得られた近似分布と元の定常分布との差の全変動ノルムに対する上限公式を導出した.これにより,数値計算結果の精度を事前に見積ることが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の計画では,平成25年度は「(3) GI/G/1型マルコフ連鎖の切断とその誤差評価」と「(4) ブロック単調性を有するマルコフ連鎖の切断とその誤差評価」の2つの研究項目に取り組む予定であった.しかし,研究項目(3)については,ブロック単調性を仮定しない場合,手持ちの数学的道具では解決が困難であることが判明したため,本研究項目に変えて,平成24年度に実施した「(2) GI/G/1型マルコフ連鎖の定常分布に関する劣指数的漸近解析とその応用」に引き続き取り組んだ.その結果,「研究実績の概要」で述べたような新たな成果が得られ,それらをまとめた論文を査読付き論文誌に投稿した.また,研究項目(4)については,当初の計画通り研究が進み,得られた成果をまとめた論文は,査読付き論文誌への採録が決定した(本報告書作成時において掲載号未定).なお,平成24年度に実施した「(1) 累積過程の重裾ランダム時抽出の漸近解析」の成果をまとめた論文が,査読付き論文誌に掲載された(平成25年12月).以上のことから,本研究課題の現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時において,平成26年度は「(5) GI/G/1型マルコフ連鎖の定常分布の軽裾漸近解析」および「(6) ランダム抽出された累積過程に対するさらなる漸近解析」に取り組む予定であった.研究項目(5)については当初の計画通り着手する予定であるが,研究項目(6)には技術的困難がいくつかあり,本年度中には大きな進捗が期待できない.そこで,研究項目(6)に変えて,平成25年度の研究項目「(4) ブロック単調性を有するマルコフ連鎖の切断とその誤差評価」を継続し,既に得られている成果を発展させるべく研究を行う.具体的には,平成25年度では離散時間マルコフ連鎖を対象としていたが,平成26年度では連続時間マルコフ連鎖を対象とする.一般に連続時間マルコフ連鎖の方が離散時間マルコフ連鎖より解析的な取り扱いが難しく,研究代表者が知る限り,ブロック単調性を有する連続時間マルコフ連鎖の切断誤差評価に関する先行研究はない.そこで,離散時間モデルの時と同様に,幾何的ドリフト条件を仮定した下で,最終ブロック列増大切断によって得られた近似分布と元の定常分布との差の全変動ノルムに対する上限公式の導出を目指す.この目標が達成できれば,一様化手法が適用できず離散時間マルコフ連鎖に帰着できないような待ち行列モデルへの応用が可能となる.
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