2012 Fiscal Year Research-status Report
大規模災害と復興パラダイムの形成・変容ー旧ユーゴ圏の近現代を対象にー
Project/Area Number |
24710188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田中 傑 東京理科大学, 付置研究所, 研究員 (60468569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 災害復興 / 災害対策法制度 / 旧ユーゴスラヴィア / スコピエ地震 / コトル湾地震 / ソチャ渓谷地震 / プレファブ仮設住宅 |
Research Abstract |
[研究の成果の具体的内容] スコピエ市文書館所蔵の震災関連文書の内容に基づいて地震発生後の国や自治体の行動を時系列で把握したほか、同市都市計画・建築局の協力により、震災後のプレファブ仮設住宅の建設状況の詳細を把握した。プレファブ仮設住宅が震災後50年のあいだにどのように変容し、利用され続けているか踏査した。 [研究の成果の意義] わが国では応急仮設住宅への入居期間は2年間と決められているが、スコピエ市では当初こそ仮設(入居期限は明記されてない)と位置付けられていたプレファブ住宅が現在まで50年間利用され、各世帯の生活が安定するに従ってライフステージや好みに応じた増改築がなされてきていた。同市の復興は当局による復興計画が中断した点では失敗であるが、仮設居住を結果的に長期間にわたって許容した点で被災者の生活を安定化させたと評価することもできる。 [研究の成果の重要性] 応急仮設住宅の入居期限はこれまでの2年間から東日本大震災後に3年間、そして4年間と延長されてきた。今後、復興公営住宅を建設する代わりに応急仮設住宅の長寿命化や連棟ユニットハウスの部分的な改築などがなされる可能性が高まっており、スコピエ市での経験を日本の事情に則して解釈し直し、発信することで、日本の災害復興のあり方を再検討する視座を提供できるものと考えている。 [その他] スコピエ市博物館のMs. Namicheva氏より、震災復興計画に関わる資料整理への協力を打診された。今後、現地研究機関と共同で「二国間交流事業」などへ応募し、本研究課題を契機とした都市計画・建築分野でのマケドニア(旧ユーゴスラヴィア)との交流をさらに発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スコピエ市で収集した同市の復興計画と仮設住宅の実態に関する情報をマケドニア人の協力により整理中であり、その成果は日本建築学会の大会梗概(投稿済み)のほか、3つの学会に投稿予定である。 スコピエ市の研究作業に予想以上の時間を配分したため、申請書に記したコトル湾地震に関する研究が後回しとなっており、本年度はコトル湾地震の作業を本格化させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
先述のように、個別の災害復興事例(スコピエ)に関する情報収集・整理は進捗しているが、今後は災害対策関連法制度に関する情報収集・整理(各災害事例が災害対策関連法制度に影響を与えたのかどうか)に重点を移して行く必要がある。 昨年度、旧ユーゴ時代のスロヴェニアにおける市民向け災害対策マニュアル(Prebivalcem Ljubljane - za primer naravnih in drugih hudih nesrec-『リュブリャナ市民にむけて 自然その他の災害時に』)を入手し、内容の把握を行ったが、研究課題を遂行するために同種のマニュアルの変遷を時系列で整理する必要があるものの、そうした資料は旧ユーゴスラヴィア諸国の図書館の蔵書検索を行っても1点該当するだけと判明している。 そこで、本年度は旧ユーゴ諸国における安全保障学の研究者、たとえばベオグラード大学のヴラディミル・ヤコヴリェヴィチ教授などにコンタクトをとり、研究のチャンネルの多角化を進めて行く必要があると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
[前年度からの繰り越し金]373,837円 [物品費]200,000円=GPSロガー(前年度未購入)、図書・地図資料 [旅費]70,000円=国内旅費(研究協力者との打ち合わせ、北海道における『日本建築学会』での学術講演発表、成田空港への交通費)、700,000=国外旅費(ソチャ渓谷地震およびコトル湾地震の現地調査、スコピエにおける『ヨーロッパ耐震工学会』での発表) [謝金等]440,000円=現地収集資料の解読および整理作業(アレクサンドラ・クルスティチ(大阪大学)および石榑督和(明治大学)に依頼予定) [その他]50,000円=論文掲載料、論文別刷り、コピー代、通信費
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Research Products
(1 results)