2012 Fiscal Year Research-status Report
バンコマイシンよりも優れた治療効果を示すトリプロペプチンCの作用機序解析
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24710254
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
橋爪 秀樹 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主任研究員 (10311276)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抗菌剤 / MRSA / ペプチド系化合物 / 作用機序解析 / トリプロペプチン / 細胞壁合成 |
Research Abstract |
平成24年度は、実験計画に沿った検討を行った。トリプロペプチン(TPPC) はウンデカプレニルピロリン酸 (C55-PP) を標的とすることを明らかにしているが、TPPC は C55-PP と複合体形成後に別の作用を示すことが示唆されていた。そこで、 TPPC の作用機序をより詳細を明らかにするために他に関与が想定される遺伝子の過剰発現株ならびに発現抑制株を黄色ブドウ球菌での構築を目指した。発現抑制株は構築には至らなかったが、過剰発現株の構築は達成された。関連遺伝子過剰発現株に対する TPPC の感受性を調べたところ、変化が見られす、TPPC が直接 lipid II を相互作用する可能性が示唆された。その後、 lipid II と TPPC が直接相互作用することを示唆するデータが得られたので、現在詳細を解析中である。 また、固体 NMR を利用して構造学的作用機序解析を進めるため、安定同位体ならびにフッ素ラベルした TPPC発酵生産の条件検討ならびに生産を行なった。これまで13Cマルチラベル体および15N マルチラベル体を調製し、共同研究者のワシントン大学へ送付した。目的のデータを得るには充分な量とは言えないため、現在さらに発酵生産を進めている。この他、脂肪側鎖をフッ素ラベルすることを目指していたが、予備検討から取り込み効率が悪く、解析に十分量を得ることは困難と判断したため、本検討はペンディングとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、次の二つを計画していた。1、関連が予想される細胞壁合成遺伝子の過剰発現株および発現抑制株を作成し、感受性変化を指標に TPPC 複合体の標的分子を絞り込む。2、固相NMR を利用した構造学的作用機序解析用にラベル(19F, 13C, 15N) TPPC生産のための培地検討ならびに発酵生産を行う。 前者に関しては、過剰発現株構築を達成し、その感受性変化から TPPC が lipid II と直接相互作用することを示唆するデータを得た。後者は、 13C ならびに15Nマルチラベル体の発酵条件の確立とラベル体の精製を達成しており、当初必要とされるサンプルの確保が完了した。ただし、一回の測定で目的の相互作用部位が明らかになるとは言い難いため、現在サンプルの発酵生産を継続し、次の測定に必要なサンプルの確保を進めている。以上のように、計画に沿って研究が進展しているものと判断している。一方で、TPPC が lipid II と直接相互作用するという当初予期していなかったデータが得られたので、今後の方針に関しては変更を加えるつもりでおります。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、主に次の3点の検討を進める。1、 TPPC と lipid II の相互作用解析、2、固体 NMR 測定用のサンプル調製、3、関連が想定される遺伝子発現抑制株の確立である。 1、所属する機関で昨年度購入した相互作用解析機器 (SPR, ProteOn) やiTC を駆使し、相互作用の強度を客観的に数値化して、もう一つの標的である C55-PP との関係を明らかにする。2、生産方法は確立しているため、培養条件の最適化とともにラベル体の調製を進め、共同研究者のワシントン大学にて測定を行う。3、Staph. xylosus 由来のキシロース依存性プロモータがうまく機能せずに確立に至っていないため、その原因究明を行ないつつ、代替方法を検討する。 この他、作用機序解析の有用なツールとして細菌の代謝産物を網羅的に解析するメタボロミクス解析の条件検討も進めているが、現在のところクエンチングの方法が確立されておらず、クエンチングの条件検討を行なっている。 本年度は上述の検討から得られた結果を総合的に利用して、次の創薬に繋がる探索系の構築も行なって行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、次のようなものに研究費を使用する予定である。なお、昨年度予算で計上したフッ素ラベルロイシンは、予備検討から達成の実現性が乏しいことが示唆されたため、実施を見送った経緯があるが、新たに TPPC との相互作用が示唆された lipid II の合成外注費に充てる予定である。 前項1の目的を達成するために、 lipid II の合成外注費に50万円、相互作用解析における消耗品費35万円。 前項2の達成のために、ラベル体作成前駆体費25万円、培地成分5万円、サンプル輸送費1万円。 前項3に関しては、遺伝子操作キット、シーケンス費等20万円、消耗品費30万円。 この他、学会参加費30万円を予定している。
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[Presentation] In Vitro Antimicrobial Activity and In Vivo Efficacy In a Mouse Staphylococcal-Septicemia Model of Water-soluble Tripropeptin C Analogs2012
Author(s)
S. Hirosawa, H. Hashizume, Y. Kobayashi, R. Watabe, K. Inoue, Y. Takahashi, S. Harada, S. Ohba*2, T. Masuda, R. Sawa, Y. Takahashi, T. Miyake, A. Nomoto and M. Shibasaki
Organizer
52nd Interscience conference of antimicrobial agents and chemotherapy
Place of Presentation
Moscone Convension center, SanFrancisco, USA
Year and Date
20120911-20120911