2012 Fiscal Year Research-status Report
海洋島における外来木本種の侵入とその駆除が森林生態系の水循環に及ぼす影響
Project/Area Number |
24710274
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
畑 憲治 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (60468147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 土壌含水量 / 蒸散 / トクサバモクマオウ / 小笠原諸島 |
Research Abstract |
小笠原諸島の固有生態系の保全・復元を実施する上での外来生物の影響の評価とその緩和手法の確立のためには、生態系内の物質の収支や循環への影響を明らかにする必要がある。本研究では、小笠原諸島に侵入した侵略的外来木本種トクサバモクマオウの駆除が、生態系内の水の循環に及ぼす影響を評価し、本種を含む生態系の管理のための科学的情報を提供することである。 調査は、小笠原諸島西島のトクサバモクマオウが優占する森林内で実施した。西島では、広範囲においてトクサバモクマオウが優占する森林が分布しており、トクサバモクマオウの駆除後の植生変化のモニタリングを兼ねて2010年より段階的にトクサバモクマオウの駆除が実施されている。 平成24年度には、トクサバモクマオウの駆除が有無や駆除からの経過時間が空間的・時間的に異なる場所で土壌含水量を比較した。トクサバモクマオウを駆除した場所と隣接する駆除していない場所において、2012年7月、10月、2013年2月に土壌含水量を比較した。その結果、全ての測定時期においてトクサバモクマオウの駆除区における土壌含水量は、対照区におけるそれよりも有意に高かった。 また、土壌含水量の時間的に連続的な測定を実施した。トクサバモクマオウが優占する森林において、2012年6月に土壌含水量測定用のセンサーとデータロガーを設置し1時間おきに土壌含水量を測定した。2012年7月5-11日に各対の一方を含む10×10mの範囲に存在するトクサバモクマオウを除草剤を注入することで人為的に枯殺した。このトクサバモクマオウの駆除前後を含む土壌含水量の時間的変化を対ごとに駆除区と対照区で比較した。その結果、駆除後の降雨の後の乾燥期における土壌含水量の減少の程度が、駆除区のほうが小さい傾向があった。これは、駆除に伴う蒸散量の消失と関係している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、トクサバモクマオウの駆除が土壌含水量に及ぼす影響を評価するために、実験的なトクサバモクマオウの駆除による土壌含水量の時間的・空間的変化を評価した。アクセスが悪く、上陸の可否が天候に大きく左右される無人島であることを考慮すると、調査区の初期設定、調査地の基本所法の記載のための調査(林分のバイオマス、リターの堆積量、林冠開空度など)、データロガーなどの設定と約9カ月分のデータの回収および計3回の土壌含水量の測定ができたことは、予定していた内容をおおむね実施できたと言える。 一方で、地温測定のために設置した温度ロガーのデータは、回収ができなかった。この原因として、読み取り機との接触不良のためデータが考えられる。来年度にロガーそのものを回収し、必要に応じてメーカの担当者に修理、データの吸い上げを依頼する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度から実施している継続調査を実施する。また、本研究の調査区には、2012年6-7月の土壌含水量測定後から2013年6月までに、段階的に駆除される場所が含まれている。2013年6-7月に再度土壌含水量を測定することで、駆除からの経過時間が異なる場所における土壌含水量を比較する。さらに、駆除したトクサバモクマオウのバイオマス、リターの堆積量、林冠開空度といった土壌含水量に影響を及ぼす可能性がある要因との関係について解析する。 2013年6-7月にデータロガーのデータの回収を実施する。調査期間が1年間を超えるまで測定を継続したうえで、駆除前後の土壌含水量の時間的変化のデータの定量的な評価を実施するために、統計的な解析を実施する。具体的には、一般化線形混合モデル(GLMM)作成する。このモデルでは、応答変数を土壌含水量、説明変数を駆除の有無、一定の効果らの経過時間(以上固定要因)、調査区(ランダム要因)とする。また、1日の中での時間変化といった周期性を考慮する。 以上から得られた研究結果は随時、学術雑誌に投稿する。また、研究成果は2014年3月に実施される日本生態学会大会もしくは森林学会大会において発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費(消耗品):野外調査用具費として23万円計上した。これには、マーキング用のタグ、サンプル回収、処理、保存時に必要なビニール袋、紙袋などが含まれる。 旅費(国内旅費):2回の小笠原諸島への渡航費と島内での交通費および宿泊費として30万円(15万円×2回)と学会への参加費として10万円(5万円×2回)を計上した。さらに、文献収集などのための交通費として10万円(2万円×5回)を計上した。 謝金:英文校閲費として15万円(5万円×3回)を計上した。 その他:調査地への西島への傭船費として18万円(3万円×6回)を計上した。 なお、24年度には、当初予定よりも効率的な予算執行で研究を進めることができたため、24年度の残金が発生した。
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Research Products
(3 results)