2014 Fiscal Year Research-status Report
中国・「重慶モデル」の検証-社会・経済の発展と地域構造の変容
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24710294
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
小原 江里香 久留米大学, 経済学部, 准教授 (30400203)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市化 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計データ分析の成果については以下の2点に集約される。 1.重慶市の所得格差の動向分析。中国における所得格差は都市・農村格差の拡大によって引き起こされていると指摘されてきたが、近年の重慶市の動向を分析する限り、都市・農村格差は縮小傾向にあり、一方で都市内部、農村内部の格差が拡大の傾向にあることが明らかになった。2.重慶市の所得格差と都市化の関係に関する実証分析。一般に途上国研究では、都市化は格差を拡大させる要因であると考えられているが、中国では逆の結論を主張する先行研究が多い。重慶市を対象に実証分析を行ったところ、重慶市においても、都市化と所得格差はマイナスの相関関係にあることがわかった。
現地調査の成果については、以下の3点に集約される。 1.重慶市雲陽県で住民数名に対し、土地流動化、年金制度、戸籍制度改革等に関する聞き取り調査を実施した。その結果、重慶市が実施している「地票」制度や土地流動化の見返りであるはずの手当てなど、一般住民には周知されていないことが判明した。2.重慶市市街地に位置する「両江新区」と呼ばれる経済開発区の現状について、「両江新区」管理委員会の関係者に対して聞き取り調査を行った。その結果、重慶経済は薄熙来事件によってダメージをほとんど受けることなく、自動車産業やIT産業の集積地として成長しており、「両江新区」は経済開発区として重要な役割を果たしていることが明らかになった。3.重慶市内に自動車部品工場の生産拠点をもつ日系企業を訪問し、経済活動の現状およびワーカーの雇用状況等について聞き取り調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中関係の緊張により、日本人研究者による中国現地調査がやや困難となったため、現地調査の実行が当初計画よりも遅れたが、所得格差の動向や都市化に関連する計量研究などは概ね計画にそうかたちで進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに推進する。日中関係がやや落ち着きを取り戻してきたので、来年度は最終年度ではあるが、現地調査を追加で行いたい。また、中国経済経営学会および第6回 Transition and Economic Development(TED)国際シンポジウムにエントリーし、研究内容を積極的に発表していきたい。
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Causes of Carryover |
日中関係の緊張により、日本人研究者による中国現地調査が困難となり現地調査の実行が当初の計画よりも遅れたため、実際の支出実行額が予定額に比べて少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に追加の現地調査を実施することによって、今年度の調査の不足分を補う予定である。その追加調査の費用については、今年度生じた余剰分を使用する。
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