2013 Fiscal Year Research-status Report
韓国の男性性とミリタリズム―周縁的兵役参与者の語りから紡ぐジェンダーの重層性
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24710306
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Research Institution | Nagasaki University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐々木 正徳 長崎外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40403977)
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Keywords | ジェンダー / ミリタリズム / 男性性 / 韓国 / 兵役 / 公益勤務 / 周縁 |
Research Abstract |
平成25年度は、1.聞き取り調査およびフィールドワーク、2.論文執筆、3.先行研究の収集、を実施することができた。それぞれの成果は以下の通りである。 1点目の聞き取り調査およびフィールドワークでは、述べ11名の調査協力者から聞き取り調査を実施することができた。その中には、以前に助成を受けた(課題番号19710220)研究の際に調査に協力してくれた人物も2名含まれている。かれらには前回の聞き取り調査の内容を振り返りながら、その後の生活や当時と現在の考え方の差異などについて話しを聞くことができた。その他の人物からの聞き取り調査もふまえて考察を進めているが、昨年の仮説であった「傍流でありながらも社会的成功が可能な方法」としての公益勤務という解釈には、ある程度の妥当性があるようである。しかし一方で、通常の兵役を終えられなかったことによるルサンチマンが色濃く表出される調査協力者も複数名存在している。韓国男性のライフストーリーの中に兵役体験をどのように位置づけるかについて、データを基により丁寧に分析を重ね、結論を導出していきたい。 2点目について「代替服務という生き方-韓国の男性性と兵役の多様性-」という論文を脱稿した。論文では、義務兵役の政治性と多様性について言及し、兵役体験をもって韓国の「男性性」が一様に形成されるとみなされがちな既存の韓国社会論について批判的検討を行った。具体的な事例としては、産業技能要員として兵役を終えた男性への分析を行った。 3点目については前年度と同様に関連領域の先行研究の収集に努めている。新たな成果としては、人々の思考や人類の文化、ある社会の傾向を「戦争」や「軍隊」といったキーワードを用いて分析する方法について、多くの示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れているとした理由は以下の通りである。 1.調査は概ね順調に実施できているが、分析が十分には進んでいない。 2.論文が一編しか投稿できなかった。ただし、未発表の論文を一編脱稿しており、平成26年度には何らかの方法で、成果として公開したい。 3.学会発表ができていない。調査を優先したこと、および学内業務と重なったことなどで学会自体に参加する機会が少なかった。しかし、26年度は既に二つの学会に発表を申し込み済みである。発表後の質疑応答で得られた知見を最終成果報告へとつなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.7月までにこれまでの調査結果をまとめ、8月に論文執筆、9月に最終調査を行う。 2.今年度脱稿済の論文と合わせて、最低3件、論文を投稿する。(投稿が26年度、掲載が27年度になる雑誌も含む) 3.9月と12月に学会発表を行う。 4.2月までに最終報告書をまとめる。 5.最終報告をまとめる途上である程度目途がつけば、何らかの出版助成に申請する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
利息などの端数。 過不足のない執行につとめる。
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Research Products
(1 results)