2014 Fiscal Year Research-status Report
沖縄の国際結婚とジェンダー再配置――越境する家族と移住女性の主体形成・権利保障
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24710307
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
澤田 佳世 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (60454998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際結婚 / 再生産領域のグローバル化 / 沖縄 / ジェンダー / 家族 / 移民女性 / 生殖 / 再生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代沖縄の家族の越境的再生産とジェンダー再配置の諸相を探究することにある。具体的には、商業的斡旋業を介しアジア結婚移民女性が集住する沖縄宮古島を主な調査地に、送出側としてのベトナムとフィリピンの社会状況もふまえ、(1)現代沖縄の人口動態の変化とジェンダー配置がもたらす再生産危機の位相、(2)越境する沖縄家族の再生産戦略、(3)アジア移住女性の移住経路と定住状況、(4)彼女たちの主体形成と家族のジェンダー関係の再編の在り方、(5)送出側の状況を含めた移住女性の権利保障をめぐる課題を、移住女性の主体的意味づけのもと検討する。 目的達成のために、今年度は、これまで収集した【①宮古島市の人口動態とジェンダー配置、国際結婚とアジア移住女性の定住状況】、【②アジア移住女性の主体形成及び家族のジェンダー関係と再編、移住女性の移住経路、越境する家族の再生産戦略】に関する資料を整理分析しながら、上記②の継続調査と【③移住女性の自律と権利保障に関する課題の検討】にむけたヒアリングを沖縄本島、宮古島市とフィリピンで実施した。 沖縄及び宮古島では、宮古島市役所、県立宮古病院、沖縄県立図書館、県公文書館、県庁行政資料センター等で、上記①の関連資料を追加収集し、①②③に関して宮古島市の橋口紀江・保健師に、主にベトナム人女性を中心とするアジア結婚移民女性の生活環境や家族・社会状況に関するヒアリングを行った。フィリピンでは、フィリピン大学ディリマン校国際研究センターを拠点に、DAWNや女性シェルター等を訪問し、フィリピンの女性の社会的地位、帰還した女性とその子どもの権利保障に関する資料収集および関係団体のヒアリングを実施した。DAWNでは、日本で日本人男性との間に子どもをもち、離婚・別離のすえに帰還してシングルで子どもを育てる母親とJFCと交流し、その自律と尊厳回復に向けた活動を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの達成度の評価は「やや遅れている」である。平成26年度は、在外研究の機会を得て、ハワイ東西センターに1年間赴任したが、沖縄とハワイを中心とするアジア太平洋地域のリプロダクションや移民のジェンダー分析について新たな研究課題に取り組んだため、本研究課題のみに費やす時間を確保することができなかったことが主な理由である。 また、平成26年度は、前年度までに収集した宮古島の人口とジェンダー、国際結婚とアジア移住女性に関する資料分析を継続し、宮古島のアジア結婚移民女性の聞取り調査、彼女たちの権利保障に向けた関係機関とのヒアリング調査を宮古島、フィリピン、ベトナムで実施する予定であったが、ベトナムの訪問先・調整役とのスケジュールが合わず、次年度に繰り越すこととし、今年度は沖縄本島と宮古島、およびフィリピンでの現地調査のみを行うことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、過去3年間に収集した【①宮古島の人口動態とジェンダー配置、国際結婚とアジア移住女性の定住状況】に関する資料の整理分析を行いながら、【②アジア移住女性の主体形成及び家族のジェンダー関係と再編、移住女性の移住経路、越境する家族の再生産戦略】に関するアジア結婚移民女性へのインタビュー調査を宮古島にて継続し、並行して、【③移住女性の自律と権利保障に関する課題の検討】にむけた関係団体・個人へのヒアリング調査を宮古島市とベトナムで実施する。各研究課題について、新たな知見が得られた場合には、随時成果発表を行っていく。 また、前年度までに沖縄本島・宮古島・フィリピンで実施した①②③の調査研究の結果と今年度の研究成果を、相互に関連付けて整理分析し、調査報告書を作成する。結婚移民女性と沖縄男性の国際結婚に焦点をあて、女性の主体的意味づけのもと、現代沖縄の家族の越境的再生産のありようとそのジェンダー的含意について検討する。より具体的には、(1)現代沖縄の人口変動と家族の再生産の「機能不全」、(2)越境する沖縄家族の再生産戦略、(3)女性の移住経路と定住状況、(4)移住女性の主体形成、家族のジェンダー関係、(5)送出側の社会状況も含めた結婚移民女性の自律と権利保障をめぐる課題に焦点をあて探究する。研究成果は、調査対象地域・対象者に不利益が被らないよう注意しながら、ジェンダー研究・社会学・人口学系の雑誌で順次発表し、協力者・協力団体にも調査結果を報告、研究成果を還元できるよう努める。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、前年度までに収集した宮古島の人口とジェンダー、国際結婚とアジア移住女性に関する資料分析を継続し、宮古島のアジア結婚移民女性の聞取り調査、彼女たちの権利保障に向けた関係機関とのヒアリング調査を宮古島、フィリピン、ベトナムで実施する予定であったが、ベトナムの訪問先・調整役とのスケジュールが合わず、次年度に繰り越すこととし、今年度は沖縄本島と宮古島、およびフィリピンでの現地調査のみを行うことになったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、平成27年度に、ベトナムでのヒアリング調査と宮古島でのベトナムを中心とする結婚移民女性へのインタビュー調査を継続実施する。なお、ベトナム及び宮古島調査での調整役とは、既に調査計画を打合せ中である。また、研究課題による知見の成果発表を、学会・研究会での口頭発表及び学術雑誌への論文投稿を通じて随時行う予定である。よって、未使用額は、ベトナムと宮古島での現地調査にかかわる国内外旅費、成果発表に関する国内外旅費、および報告書作成に要する図書資料等の購入経費に充てる。
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Research Products
(3 results)