2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720034
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨樫 進 東北大学, 文学研究科, 助教 (20571532)
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Keywords | 日本 / 古代 / 仏教 / 戒律思想 / 梵字・梵語 / 三国観 |
Research Abstract |
申請者は鑑真一門の将来した戒律思想が日本仏教に与えた影響とその意義を動的・かつ俯瞰的に提示するとともに、従来その断絶面が強調される傾向にあった奈良仏教史・平安仏教史の展開過程を連続的かつ有機的に理解することを目的として、鑑真門流の高弟・法 進の戒律思想を8世紀後半から9世紀の日本仏教思想史上に位置付ける準備を行ってきた。 平成25年度においては、『新請来経等目録』『秘密曼荼羅十住心論』『梵字悉曇字母并釈義』などを題材に、前年度に検討した最澄とともに平安時代初期の新仏教の潮流を形成した空海の言語観の検討・分析を行った。最澄が自らの思想を「仏教発祥の地インド由来の護国仏教思想」と見なす根拠として機能するインド出身の密教僧・不空の事績は、空海によって初めて日本に将来された『表制集』に基づくものと考えられる。血脈の創出という方法によって不空の法系との接続を果たした最澄に対し、空海は唐における天竺出身僧からの梵語受学という体験を活かし、梵語を超時空的存在たる毘盧遮那如来へと直結し得る〈ほとけのことば〉として観念づけることになった。このような空海の試みは、漢訳仏典を金科玉条とするそれまでの〈仏教先進国〉中国の地位を相対化させるとともに、9世紀以降に活躍する後続の僧(真如・円仁・円珍……)に仏教発祥の地・天竺への憧憬をもたらすこととなった。前近代の日本における有力な世界観のひとつである「三国観」の形成は、かかる言語学的側面からも推進されていったものと理解することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画の遅れの主な原因としては、以下の二点が指摘できる。 一点目としては、事情により平成25年度中に予定していた法進の戒律注釈書に関する史料調査を実現するための時間的な余裕がとれなかったことなどにより、法進の戒律思想に関する分析・検討が滞ってしまったことが挙げられる。 二点目としては、研究活動の進展に伴って当初予定していなかった題材を新たに研究対象に加える必要の生じたことが挙げられる。具体的には、不空の密教思想を日本に紹介した空海やそれを継承・発展させた円仁・円珍の事績、および最澄や空海が修学した9世紀初頭の中国仏教思想史や最澄・空海帰国後の日本仏教思想史・日本密教思想史に関する研究の必要性が生じたため、今年度はは当初の計画になかった空海、および日本真言宗における密教観・真言(梵語・言語)観についても研究を進めている。これは日本思想史上大きなテーマの一つである「三国観」の分析にも深く関係する内容であり、本研究の成果を当初の計画よりも普遍的かつ俯瞰的なものとする上で必要不可欠なものであると申請者は考えている(詳細は【今後の研究の推進方策】欄を参照されたい)。 以上のような反省をふまえ、平成26年度は計画通りの研究を達成できるよう努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、これまで十分に行うことのできなかった法進の戒律思想に関する分析・検討を積極的に進めていく 。とくに、法進の戒律注釈書に関する史料調査を実現することにより、研究に不可欠なテキストの基礎整備を推進するとともに、先行研究の成果をふまえて新たな知見を得られるようにしたい。 また、一昨年度の研究を通じて浮上してきた「古代日本仏教思想史上におけるインドへの視線」という新たな分析視点をより発展させていく。インド→中国→日本という仏教伝来の道筋に基づく「三国観」は世界観の骨格として前近代の日本人を大きく規定する役割を果たしており、日本思想史上大きなテーマの一つであるといえる。しかし、これまでは平安時代後期~中世における用例・事例の研究が中心となり、申請者が研究対象とする奈良時代後期から平安時代初期にかけての用例・事例については必ずしも体系的な研究成果がまとめられていない。【現在までの達成度】の項目においても触れたように、「三国観」という新たな研究視覚を設けるとともに、日本文学・言語学などの他分野の研究成果を可能な限り採り入れることによって、本研究課題の成果を単なる戒律受容史のみに完結させることなく、たとえば当該期における日本人の世界観解明などの新たなテーマへと発展させる道筋をつけることも可能になると思われる。したがって、今後は最澄にくわえ空海・円仁といった平安初期の渡唐経験をもつ密教僧の事績についても注意を払っていくとともに、奈良時代(8世紀)の法進を中心当初の研究計画との整合性にも十分配慮した上で、より大きな問題意識のもとに研究課題を達成させていくことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に計画していた史料調査・テキスト作成を実施することができず、それらにかかる旅費・人件費を使うことができなかったこと、及び研究成果の発表を目的とする旅費の使用が当初予想を下回ったことによる。 次年度の研究費の使用計画については、国内外の学会・研究会における研究成果の発表を目的とする旅費への支出が中心となる。 また、平成25年度中に計画していたものの実現することができなかった史料調査、およびテキスト作成に関わる人件費としても使用する予定である。
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Research Products
(4 results)