2012 Fiscal Year Research-status Report
ルドゥーの都市・建築構想における自然科学的概念(身体・性・類型学)とその政治性
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24720062
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小澤 京子 埼玉大学, 教養学部, 非常勤講師 (40613881)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 理想都市構想 / 啓蒙主義 / 生権力 / 新古典主義 / ルドゥ / 建築史 / 身体表象 / フランス |
Research Abstract |
24年度の主な成果は、ルドゥー『建築論』(およびそのプロトタイプである「趣意書」)収録のテクストと図版の分析を、特に「性の管理」、「労働と共同体」、「教育・訓育」に関連する部分に焦点を当てて行ったことである。その際に、重要な比較参照項として、ルドゥーとほぼ同時期に「空想的」建築案と解剖学的な人体部分を描いたルクーのドローイング、この時代の思想の体現である『百科全書』の関連項目、ルドゥーと身体・性への見方の共通するサド、レティフ、フーリエの建築構想とそこでの「身体・性への管理」のあり方を分析し、その相互関連性を示した。また、18世紀後半のフランスで発行された文献の調査・分析も併せて遂行することで、ルドゥーの時代における「性的身体を対象とする生権力」のあり方について、大局的な見取り図を構築した。 その成果の一部は、口頭発表「「C.-N. ルドゥの理想的都市構想における労働・教育・性愛」(美学会全国大会、10月)および「サドのイタリア紀行――空間性と時間性、身体への眼差し」(研究会「ヨーロッパ文化としてのグランド・ツアー」)として公開した。 上記成果を含めた、課題研究の総合的な成果については、次年度で得られた成果と併せて、法政大学出版局より単著として刊行予定であり、24年度はその大枠の部分(7章構成のうちの5章)の執筆を進めた。 また、建築と同時に衣服も「身体を囲繞する空間・被覆物」であり、身体に対する規範意識や自意識が現れる場である。このような問題意識に基づき、現代の「ファッション」に対して批評的アプローチを行なったものが、「COMME des GARCONS、あるいは衣服という表面においていかに多様な性を上演しうるか」(分担執筆、12月)、「keisuke kanda 「ガーリー」の突然変異」(トークショー、11月)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、招待された研究会での共通テーマとの関連などもあり、当初25年度の計画であった、「ルドゥーおよび隣接する時代の論者による、「労働」「教育」「性(恋愛)と規律訓練」の連関と建築構想との関わり」について主に調査・分析・成果公表を行なった。論文媒体による成果公表という点では、当初の予定通りに進まなかった部分はあるが、研究の進行・発展・進化という点では、おおむね計画通りに遂行することができた。 また、学会全国大会や、16世紀から19世紀の西欧を主対象とする研究者たちとの共同研究会を通して、自らの成果を広く伝え、意見交換をする機会を確保することができた。 しかし、非常勤講義や主に商業誌を中心とする依頼原稿、他科研のプロジェクトである「ヴァールブルク美学・文化科学の可能性」(平成24年度科学研究費補助金・基盤研究(B)研究代表者:伊藤博明)のイベントへの研究協力などから、当初24年度に予定していたフランスでの現地調査を行なうことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、上記の事情から当初H25年度に計画していた内容を、前倒しで遂行することとなった。 25年度は、前年度の積み残しである、建築の類型論(仏語「caractere」や「type」概念)の再検討、ならびに同時代の自然史・自然科学の言説における「特徴(caractere)」「類型」概念との比較を行なう。具体的な作業としては、ルドゥのテクスト読解と建築図面の分析、およびフランス国内を中心とする一時資料の収集と分析を行なう。 上記の研究成果については、クラクフ(ポーランド)で開催される国際美学会での口頭発表「Sade, an Architect: Characteristics of the Narrative Spaces in Voyage d’Italie」(査読通過済)をはじめ、国内外の学会での口頭発表および学会誌(美学会、表象文化論学会)への論文投稿、ならびに単著(法政大学出版局からの刊行を予定)において公表を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)