2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教 (50513115)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本映画史 |
Research Abstract |
本研究は日本の初期映画のさまざまな環境について特に法制度的側面からの検証を試みるものである。特に映画が輸入された直後、つまり映画を対象とした法規がまだ存在しなかった時期から映画を対象とする法規が生まれる時期の映画の取り締まりのあり方を検証することで、映画そのものあり方あるいは映画の置かれた文脈を明らかにすることを目的としている。計画調書では計画を大きく3つに分け、(1)「観物場取締規則」にもとづく映画の取り締まり、(2)明治43年警視庁映画取り締まりのための内規、(3)「活動写真興行取締規則」と映画の位置づけ、についてそれぞれ資料調査そしてその考察を行っている。初期の映画は見世物を対象とした「観物場取締規則」や演劇を対象とした「演劇取締規則」などを用いて映画を取り締まったとされているが、実際には当時の映画の取り締まりのあり方が明確にわかっているわけではない。その根拠となる資料調査を続ける一方で、映画の置かれた環境をその周辺の芸能との関わりからの検証を試みている。取り締まりのあり方がそうであるように、映画は興行的にみても、芸態そのものをみても、見世物や演劇と深い関わりを持っていた。そうした点に注目し、7月には東洋音楽学会東日本支部例会において「映画と演劇と見世物の間―浅草公園六区の芸能史の一側面―」と題した発表を行った。この発表は浅草公園六区で明治末期に行われた映画興行と見世物や演劇との関わりを考察したものである。警察の取り締まりのもと、映画と演劇と見世物がいかに錯綜した状況おいて成り立っていたのかといった点について検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、大きく3つの課題に分け、初年度はそれぞれの関連する資料調査を行う予定であった。予定より調査にかける時間が足りなかった点もあるが、本研究に必要な資料の収集が必ずしも順調には進まなかった。特に計画調書で示した計画(1)は明治期の東京の芸能取り締まりについての研究計画であった。映画が登場したばかりの時期は、警視庁や東京府あるいは内務省などの国の意向はあったとしても、具体的な取り締まりの方針は管轄する警察署単位で取り締まり方針を定め、運用していた可能性が高い。例えば浅草公園六区なら馬道署、象潟署などが上部組織の意向を踏まえながらも独自に取り締まりを行っていたと思われる。こうした取り締まりに関わる文書などは震災や戦災で消失しているか、それ以前に廃棄されている可能性もあるという。また計画(2)の警視庁の内規に関しても調査が難しいことは同様である。警察署よりは上部組織であるが、内規という性格上からも文書として現存の可能性が薄いと思われる。調査の難しさは計画書の段階で危惧していた問題でもあり、直接的な資料が確認できない場合でも別の方法で調査を継続していく必要があるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に関わる直接的な資料の調査は困難な状況にある。当然今後も直接的な文書の確認に努めるが、間接的な資料たとえば関係者の証言や新聞雑誌の記事などの調査を集中的に行いたい。また本研究は主に東京の事例を中心にしているが、芸能の取り締まりも含め警察行政は内務省の指導のもと全国的に同じ方向性で行われていたと思わる。大阪、京都、名古屋などをはじめとする地方都市から東京の事例や全国的な芸能取り締まりのあり方を検討することも可能である。調査の範囲を広げ、間接的な資料も積極的に収集していく必要があるだろう。 計画書の計画(1)、(2)は警察内部の取り締まり方針についての調査であるが、計画(3)は「活動写真興行取締規則」が大正6年に制定された際の問題である。この規則ができると同時に演劇の取り締まりにも変化があったと思われる。映画に対する規則が登場した際の他の芸能への影響という側面を集中的に調査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は資料調査を基本とした研究であるが、主に調査の対象となる取り締まり関係の法規は各府県の公報などに掲載されたもので、書籍としてまとまっているものではない。それを改正経緯も含め詳細に調査するには、相当な時間を割いて作業をしなければならない。また本研究の調査対象の中心は東京の事例であり、東京の図書館、公文書館などでの一定の時間をかけた調査が必要となる。24年度に東京に赴く日数をあまり割けなかった分も含め、調査のための旅費や資料の複写・撮影代が必要となる。
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Research Products
(1 results)