2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720068
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教 (50513115)
|
Keywords | 日本映画史 / 芸能史 / 日本演劇史 |
Research Abstract |
本研究は日本の初期映画のさまざまな環境について特に法制度的側面からの検証を試みるものである。計画では大きく3つに分け、(1)「観物場取締規則」にもとづく映画の取り締まり、(2)明治43年警視庁映画取り締まりのための内規、(3)「活動写真興行取締規則」と映画の位置づけ、についてそれぞれ資料調査そしてその考察を行っている。 本年度の調査の結果、当時の警視庁で芸能関係の取り締まりを担当していた警視庁第二部の部長小浜松次郎の著書『警察行政要義』の増訂版である『増訂警察行政要義』において映画に関わる記述が初版に対して大幅に改訂されていることを確認した。そこには(2)で課題として挙げた明治43年の内規についての記述が記載されていたことが判明した。また『警察行政要義』の記述およびその版による異同を比較検証することで、(1)の課題である明治末期から大正初期の映画の取り締まりのあり方についてもより具体的に知る手掛かりとなることも明らかになった。 映画の取り締まりの特質を理解するには映画以外の芸能の取り締まりのあり方、さらにはそれらと映画との関連性を同時に検証していく必要がある。特に映画と演劇を組み合わせた連鎖劇、あるいは劇場として認められていない興行場での「演劇類似」の芸能などに対する警察の取り締まりは、映画そのものの取り締まりのあり方を検証する手掛かりとなるため、それらについての調査も平行して行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、当時の警視庁で芸能関係の取り締まりを担当していた警視庁第二部の部長小浜松次郎の著書『警察行政要義』の増訂版である『増訂警察行政要義』に、課題として挙げていた「(2)明治43年警視庁映画取り締まりのための内規」について、おそらく内規そのものと思われる項目とさらにそれに対する解説が掲載されていることが判明した。この内容を検証することで(2)の課題だけでなく、「(1))「観物場取締規則」にもとづく映画の取り締まり」の課題の調査をさらに進展させることが可能となった。(3)についても、従来の研究で調査されていなかったわけではないが、近年の映画史研究においてあまり用いられていなかった関係資料を改めて入手、調査することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた『増訂警察行政要義』およびその周辺の資料の検討をもとにした研究成果を日本映像学会の大会で発表予定である。成果を適切に公表すると同時にさらにその成果を裏付け発展させるための資料調査・検証作業を続ける。昨年度から特に進めている他の芸能との関連性の調査については調査の範囲が広く、対象の資料も厖大となるが、引き続き東京都公文書館を中心とした資料館において調査を続け、一定の成果を導きたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は資料調査を基本とした研究であるが、主に調査の対象となる取り締まり関係の法規は各府県の公報などに掲載されたもので、書籍としてまとまっているものではない。それを改正経緯も含め詳細に調査するには、相当な時間を割いて作業をしなければならない。本年度については特に東京以外の各地方への調査日程をあまり割けなかった。 次年度は各地方での調査活動の他、さらに本年度は成果発表のための旅費なども必要となる。それらも含めて全体の研究計画を進めていく。
|
Research Products
(1 results)